2月 13 2015
Cymbals大好きな僕にとって2015年は最高の年になるかもしれない
佐々木敦さんの「ニッポンの音楽」を読んだ。そんでもってその発売記念のトークイベントにも行ってきた。話聞きながら実況ツイートした物をまとめたものがあるので読んでみてください。すごく面白かったので。
佐々木敦×柴那典×南波一海 「J-POP IS OVER?――佐々木敦『ニッポンの音楽』刊行記念イベント」 Tweetまとめ – Togetterまとめ
どうしても楽曲派の部分がクローズアップされがち(その日から24時間位ずっと通知がとまらなかった)だけど、その辺は「曲が好きで、アイドルが好きなんじゃない」みたいなスノッブな楽曲派に釘を刺してるんじゃないかという印象。でも本題じゃないのでここら辺にしとく。因みにScott & RiversとJ-POPの話は、僕のブログにも記事があったりします(NHKの番組に出てきたときの奴ね)。あと、アイドルバブルは弾けるけどAKB48チルドレンがまたたくさんアイドルを目指すという見立てはなるほどなあという感じだった。
本の感想についてだけど、前もツイートしたけど色々捨象しながらも一つの「史観」を作っていて読み物として面白かった(その辺りの偏りが出るよねって件はトークイベントの序盤で佐々木さん本人がその辺わかって書いている旨を話していた)。
はっぴぃえんど、YMO、渋谷系、小室哲哉、中田ヤスタカ。個人的にはアジカン(ゴッチ)やくるり(岸田繁)、なんかもリスナー型ミュージシャンなんじゃないのとは思ったりもするんだけど、確かにセレクトについては一貫性があり、繋がりを感じられるところである。
それで話の後半ではアイドルの話が結構出てきてたんだけど、佐々木さんは「自分はアイドルのことはよくわからないけど、アイドルの曲で面白い物はあると思う」という話をしていて、その中で□□□三浦さんや蓮沼執太が参加しているNegiccoの話に。
Negiccoのアルバムは上に挙げたメンバー以外にもShiggy Jr.、スカート、Orlandといったインディポップの最前線の人達もいれば田島貴男のようなまさに90年代渋谷系の体現者がいて、その間の世代であるNONA REEVESの西寺郷太、ROUND TABLEの北川勝利、Cymbalsの矢野博康などがいて、ここ20年くらいの日本における、「ニッポンの音楽」的な「リスナー型ミュージシャン」の一つの系譜がそのまま現れているアルバムだ。前作「Melody Palette」もそうではあったんだけど、マルチネ界隈から東京インディー方面にシフトチェンジしている所なんかから人選の一貫性みたいな物は高まったとは感じるところである。個人的にはこのアルバムは前作同様良いよね位の感じなんだけど、それでも良い作品だと思うしさっき言った文脈からしてもとても重要な作品だとも思います。
そんな中、(発売が他より1日早い)Negiccoのアルバムをゲットした翌日にOK?NO!!の初CDアルバム「Rhapsody」をフラゲしたところ、これまた最高すぎた。
彼等は大学でCymbalsのコピーバンドを結成したところから始まっている(しかもCymbalsと同じ早稻田大学でだ!)。ということもあり、とても直球なまでにCymbalsのフォロワーであるということは以前書いた通りで、紛れもなく彼等も「リスナー型」のミュージシャン(特にボーカルのriddamさんは吉田ヨウヘイgroupにも所属し、ギターで作曲担当の上野翔さんは毛玉など複数のバンドに所属)だ。過去にbandcampで発表していた2枚のアルバム等からの曲をリアレンジして再録しつつ、新曲沢山でまとめ上げたのがこちら。収録時間が30分位というのもまさにCymbalsの作品っぽさを感じさせるところであり、こだわりを感じるなあと。
とはいえ、表題曲「Rhapsody」なんかはひねくれた感じ(「Straight」でまさに「ひねくれた私」と歌っている、まさにCymbalsが持っていたイメージそのものである)とは真逆の、暖かみのある歌詞とアレンジという、彼等のオリジナリティみたいな物が感じられ、単純なCymbalsのフォロワーというわけではない2010年代型ギターポップとして一つの形を作れたんじゃないかな、という印象を抱いた。SoundCloudに上がっている初期バージョン・TOKYO ACOUSTIC SESSIONでやったバージョンなど、どれと比較しても暖かみと明るさがグレードアップしている。
Rhapsody=狂詩曲=叙事的な歌なわけだけど、歌の内容は二人の日常というか半径5メートルくらいにフォーカスした超ミクロな内容というのが良い。敢えて言えば、それ自体が彼等の「ひねくれ」だったりするのかもね、とか。
そんな感じで2枚のアルバムを聴きながら「OK?NO!!も良いしNegiccoも良いし今年も楽しくなりそうだね〜」とか思っていたら、翌日(OK?NO!!のCDの発売日である1月21日)にCymbalsのリーダーだった沖井礼二さんが、2012年から歌手活動を休止していた清浦夏実をボーカルに迎え新バンド「TWEEDEES」の結成を発表。いきなり新曲を公開して配信販売まで始めるという急転直下の展開。すごい巡り合わせだな!そんでもって早速MV見たらこりゃあすごい。
原色の背景に次々変わる衣装なんてまるで渋谷系じゃないか!!って感じだけど、音も本当に沖井サウンド以外の何物でもない。サビ終わりに挿入されるコーラスや動画終わりの(サビ後の)ピアノの入り方なんかはこれまでCymbalsやFROGなんかで何度となく見てきた形だ。それだけでもうツボに刺さるし、そして最高だと思ってしまう。そしてこの音を待ち望んでたんだよなあと言うことを改めて実感する自分に気付く。FROGの3rdアルバムずっと待ってたけど、これがあれば当分それは言わなくて良いなという気になってくる。
※余談だけどFROGの1stアルバムはもう3年くらい前に沖井さんの手元にすら在庫がなくなってしまった、という状態なので、iTunesからゲットしてください。超名盤です。2ndもいいんだけどね。
先頃アルバムの全曲試聴も公開されたわけだけど、全体的な印象とかはCymbalsよりもFROG以降というかパンク要素は比較的押さえられていて割と素直なギターポップになっている感じ。そんでもって3曲目「月の女王と眠たいテーブルクロス」なんかでは歌詞に「シンバル」なんて入れちゃって(因みに沖井・清浦が公式に共演しているおそらく初めての曲である竹達彩奈「サーフでゴゴゴ」でも歌詞に「Cymbals」と出てきたりする。)。なんだけど全体的にはバラードもあったりで緩急付いてる感じで、FROGやSCOTT GOES FORのような本人主体のだけでなくさくら学院バトン部Twinklestars・竹達彩奈辺りのも含めた沖井礼二ワークスの集大成というか成果発表とも言えるような作品であるように思う。清浦さん(この機会に過去の曲聴いてみたけどすごく良い声ですね!)も「私の20代後半をこのバンドに捧げます」と宣言してたりで、活動はかなり活発になりそうな予感で期待出来る。
3月15日にOK?NO!!のレコ初ワンマンライブがあって、3月18日にはTWEEDEESのアルバムが発売される。大学生の時から大好きな(かれこれ15年くらいか!)サウンドがまだまだアップデートされて新鮮に聴き続けられるというのはとても嬉しい話だし、2015年最初の3ヶ月だけでこんなに楽しいことがあっていいんだろうか。いや、その先にはきっとそれを超えるもっと楽しいことがあるはずだ。この2者の共演とか。なーんてね。笑
10月 4 2015
mabanuaとD’AngeloからJ-POPと現代ブラックミュージックの交わりを考えた
●mabanuaプレイリスト&ワークスの話
ちょっと前の話になるけど、レジーさんのサイトのプレイリストでmabanua特集プレイリストを作成したので、まずはその振り返りと、「mabanuaと私」みたいな話から。
僕がmabanuaという名前を知ったのは2013年にjizueへのリミックス提供したことがきっかけなので、実は結構最近。その前からjizueとOvallは何度か対バンしてたわけで、今からしたら見に行っとけば良かった。後悔しても遅いけどw(2013年の秋にOvallは活動休止)
その翌年春にGotchのライブバンドへの参加が発表され、それと同時位に出たジャズバンドLibstemsのプロデュースでその仕事の幅広さを知ったわけだ。今ジャズ・ネオソウル的な物が盛り上がりを見せてきはじめ、ceroを始めダイレクトにその動きに呼応しているミュージシャンも出てきていた頃だったので、非常にタイムリーな動きに感じた。Libstemsの和田さん曰くmabanua/Ovallを擁するorigami PRODUCTIONSが出てきたときは衝撃を受けたとのことで、若手ジャズメンからしたら相当頭抜けた存在だったのだろうと推察されるところ(去年行ったLibstemsのライブの時に聞いたお話)。そんで年末くらいにアルバム「only the fact」聴いたらめちゃくちゃ良かったわけです。リリスクに楽曲提供してくれないかな〜って今年の前半ずっと言ってたw
そんな中、2015年の最初にAwesome City Clubの自主企画ライブで彼らが「mabanuaをプロデューサーに迎えアルバム作ってメジャーデビュー」することを発表したとき、これまでの動きとも相まって「これはmabanua積極的に動き追ってった方が良いのでは!?」みたいに感じ、注目していた所。そしたら春にくるりのドラマーとしての参加が発表され、「これはきた!!」となったわけ。そんでVIVA LA ROCKにて見たところかなりアシッドな感じのドラムを叩いていた(それもあって「Liberty & Gravity」とかはホント最高だった)だけに、8月に行われたNegiccoのバックドラムは期待半分不安半分で行ったわけだけど、結果としてはかなりマッチしていた。
その前辺りにプレイリストをまとめていたわけだけど、川本真琴やCharaへの楽曲提供なんかはアレンジもかなり洗練されていて、その振り幅の広さに感心するばかり。その辺は「いままでやってきたことをその場に応じて呼び起こす」、みたいなことを過去のインタビューで言ってて面白いなあと感じていた次第。
伊橋成哉×mabanuaが明かす“ミュージシャンからコンポーザーになった経緯” 「作曲の世界は3割バッターさえあまりいない」(前編)
これを読むとGotchやくるりのドラマーになぜ彼が起用されたのかがわかるなあ。ドラマーとしてもそんな感じかな?と思ったり。
このように幅広い範囲を横断しつつも個性を出しつつ、今のトレンドとリンクしているmabanuaは、やはり2015年のJ-POPのキーパーソンの一人だなあということをこの9ヶ月で改めて確信した次第。そのトレンドとは…?というところで次の話。
●ディアンジェロの伝説的ライブとネオソウル的J-POPの話
mabanuaが参加したNegiccoの野音ライブの2日後、僕はZepp Tokyoに来ていた。昨年末に突如14年ぶりのアルバムをリリースしたD’Angeloの来日公演を見るために。既にサマソニ大阪・東京公演でその評判は流れていたものの、どのような物になるのかあまり想像せずに(録画していたサマソニの映像も見ずに)ライブに臨んだ。アルバム「Black Messiah」はかなりアシッドな雰囲気の作品でこれが今のブラックミュージックの雰囲気なのかな、みたいに感じていたんだけど(ケンドリック・ラマーの新作もそんな感じだったし)、いざライブに入ったら衝撃的な程にどファンク。「陽性のブラックミュージック」とでも言おうか。どちらかというと位中に技巧でグルーヴ感出していくのかなと思っていたんだけど、とにかく演奏陣から今まで感じたことがないくらいの強烈なエネルギーとグルーヴが巻き起こってきたのが強く印象に残っている。本当に今まで味わったことがないような音楽体験で、生涯ベストライブと言い切れる。
さて、そんなディアンジェロのライブ、mabanuaやceroのメンバーをはじめ、多数のミュージシャンが見に来ていたようだ。そして、直接的な影響のある物ない物それぞれあるにせよ、ヒップホップ的なビート・ネオソウル的な手法を取り入れた楽曲がこの夏辺りからかなりオーバーグラウンド方面でも進んできている。これが2015年のJ-POPでトレンドの一つとして数えられるんじゃないかなと思うわけで、ここではそういう流れの中に数えられそうな物を挙げていきたい。
SEKAI NO OWARI「ANTI-HERO」
ブラーのデーモン・アルバーンによるプロジェクトであるゴリラズのサウンドプロデューサーを務めるダン・ジ・オートメーターをプロデューサーに迎えて作られた作品。「Tree」の楽曲とテイストが全く違って新鮮。そもそもセカオワはベースもドラムも打ち込みなので(所謂ブレイクビーツの人力再現がキモとなっている)ここら辺のくくりに入れていいのか果てしなく微妙なんだけど、ビートの意匠を取り入れたかったんじゃないかという印象。
椎名林檎「長く短い祭」
去年も既に書いた話だけど、椎名林檎はホセ・ジェイムズのアルバムの日本盤ボーナストラックに参加してるし、そのきっかけは彼女自身がホセのライブを観に行ったことなので、こういうサウンドを取り入れること自体は全く不思議ではない。手な訳でようやく出てきたか!という感じ。因みにデュエット相手(といえばいいのか?)は東京事変のギタリストでもあった浮雲なので事変ファンとしてはなんか懐かしさを覚えるw
星野源「Snow Man」
星野源もこういう曲を出すようになったか……そこまでリズムに複雑さはないにしても、アダルトな意匠としてのソウル/R&Bという物を使ってきている辺り、この辺若干意識しているのでは…?という気が若干する。あとは盟友山口一郎氏のサカナクションもニューシングル「晋宝島」のカップリングでローズピアノの音色が思いっきり昔のソウルっぽい「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームで」という曲を作っているので、その辺からの影響ってのもあるかもね(山口さんがロバート・グラスパーなどに相当インスパイアされてるっぽいという話は去年書いたとおりで。)
もちろんどメジャーなところ以外でもこういう流れに沿った物は色々出てるよね。前回のceroの記事の時にあげた面々に加えて、Suchmos、toe、アナログフィッシュ、なんかの新譜にはその影響が出ているように感じたし、まだまだこれから大なり小なり影響を感じる物が出てくるだろう。この辺も「シティぽっぽ」同様バズワード化しやすい予感があるけど、そもそも作るのもやるのも難しい印象のある音楽なので、極端な同質化により食傷気味になることはまあないかなあと思いつつ、色々境界線上をふらふら歩きながら眺めていこうと思う次第。
By たにみやん • Music • • Tags: mabanua, Negicco, くるり, 星野源, 椎名林檎