1月 18 2015
今更ながらBABYMETALの快進撃に関する覚え書き
BABYMETALのさいたまスーパーアリーナのライブも大成功で、6月に行われる次のライブが大変楽しみな今日この頃だけど、ライブや、年末のNHKの特番を受けて彼女たちのブレイクにフォーカスする記事も多数出て来ている。しかし、その中には事実誤認を含む物もあったりする。そこで「じゃあ俺が書くか」となるのが私たにみやん。今回は普段から思っていたことを体系立てて整理するという事をやってみたい。
まず最初に結論から入ってしまうが、BABYMETALの成功要因は「徹底したこだわりに基づいている楽曲の作りとメンバーのパフォーマンス、そしてライブのエンターテイメント性がずば抜けて高かったから」だと考えている。でもそれだけではたいした説明になっていないので、その辺を解きほぐしていきたい。コンセプトやら何やらの話。楽曲の話、ライブの話、メンバーの話。今までされてきた話に+α出来るような内容にしました。
●コンセプト面と立ち上げ~ベビメタはあまり期待されてなかった!?~
まずはプロデューサーであるKOBAMETALが今から2年以上前に日経TRENDYのインタビューに答えた記事からいくつか抜粋。
BABYMETALは、さくら学院の重音部という位置付けだが、企画自体はメインボーカルのSU-METAL(中元すず香)が所属していた「可憐Girls」が09年に解散となった辺りから構想していた。
SU-METALを中心としてメンバーを探したが、彼女が独特な存在感を持っているので、まったく別のキャラクターを加えるのがいいのではという結論に至った。そこで、SU-METALの周りを天使のような子たちが踊っているのはどうだろうと、YUIMETAL(水野由結)とMOAMETAL(菊地最愛)に参加してもらうことになった。
曲にしても、ライブ演出にしても、過去にメタルシーンを築き上げてきた先人たちへの愛情と尊敬を込めてオマージュしつつも、決して懐古主義にはならないようにアレンジし、メンバーに体現してもらおうと努めている。今までもメタル風味のアイドルソングはあったが、BABYMETALの場合は、まずベースに本格的なメタルサウンドありきのアイドルソングをイメージしている。
ということで「メタルありき」かつ「SU-METALありき」で作られたのがBABYMETALなんだけど、知っての通りさくら学院の重音部という位置付けでスタートしている。因みに今は料理部としてゆい・もあが所属しているミニパティはさくら学院より前に存在していて(メンバーは別)、さ学結成後ほどなくして合流している。この派生ユニットという手法により自由度が担保されたという説明がされることは多く、確かにその通りだけど、それ以上に「コケても別に痛くない」というリスクヘッジ的な側面はあったのではないだろうか。むしろ、最初は期待されていなかったからこそ単独の売り出しではなくさくら学院の一部活という位置付けでスタートせざるを得なかったのではないだろうか。
僕が興味あるのは、このベビメタに関する方針が長期的な視野をベースにしたものに変わった瞬間がどこにあるか、という話。Dragonforceのハーマン・リは「Road Of Resistance」のギターについて2013年から作業を進めてきたという発言をしている。
この時点でメタルレジスタンス第3章まで決まっていたのかどうかは知るよしもない。さすがに「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の別バージョンへのクリストファー・アモット(ex. Arch Enemy)の参加位の位置付けだったということではないだろうけど、2013年の終わり頃(LOUD PARKに出た辺り?)では既に海外展開を含めた相当先のことまで考えていたことは間違いない。ただし、先述したように結成当初はおまけ程度の扱いだったのも事実。「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のMVを公開後海外からの反応があったりした辺りからそれなりに考えてたのかもしれないけど、キツネサインの発祥のエピソードなどミクロレベルの話も含め、創発的に現状をキャッチアップしてうまく売り出していく方向に持っていったのはお見事としか言い様が無い。
●楽曲面の話~メタルじゃなくね?という問い~
こだわり、という部分がとても良く出ているのが楽曲。引き続きKOBAMETALインタビューからまた引用。
メタルは非常に細分化されたジャンルで、一言で語るのはとても難しい。パブリックイメージとしてのメタルは、長髪でレザーの服を身にまとい、尖ったギターで「ギャーッ!!」とシャウトするというような感じかもしれない。しかし、日本のメタルシーンだけでも、いわゆるアイアン・メイデンに代表される正統派メタル、マキシマム ザ ホルモンのようなミクスチャー・コア系、パンクやハードコアの混じったエモ・スクリーモ系、ヴィジュアル系のなかでもメタルアプローチを取り入れたV系メタル、などさまざまなタイプが存在する。
各ジャンルでメタルの世界観が異なるため、バンド形式の場合は音楽性を変えることが容易ではない。その点、BABYMETALはアイドルからメタルへアプローチしているため、バリエーション豊かな展開ができる。また、それが楽曲に合わせてメンバーの良さを引き出すことにもつながると考えている。
どの曲も、楽曲のコンセプトを先に立ててから作曲家に発注する。発注の段階では、コンセプトや歌詞の雰囲気、曲調、振り付け、ライブパフォーマンスと観客の反応までをすべて想定している。
「ヘドバンギャー!!」に限らず、作詞、作曲、ミックス、振り付けの方々とは、かなり綿密に話し合って作業を行っている。NARASAKI氏とも相当な回数のやりとりを繰り返し、「シンバルの位置をここにしたい」など、かなりの細かい部分まで相談させていただいた。
あとはヘヴィメタル雑誌「ヘドバン」には、「メギツネ」の編曲をしていたゆよゆっぺ氏が「36個もデモを作ることになった」と述懐するなどこの手のエピソードには事欠かず、コンセプトの追求と先人へのリスペクト・オマージュを忘れていないことがメタルファン含めて納得させてるみたいな話は今迄も語られてきている。
なんだけど、ここであえて言いたいのは「BABYMETALをメタルとして聴いてるリスナーって意外と多くないんじゃない?」みたいな話。というのもベビメタの楽曲は所謂様式美的メタルよりも、マキシマム ザ ホルモンやSlipknotの流れを汲むメタルコア・ラウドミュージック的な物の曲数の方が多い。この辺の音楽は21世紀におけるロックフェスの拡大と並行して広がりを見せてきており、轟音を体感し、踊る・もしくは暴れることの快感を求めるようなリスナーは多い。そういう所からベビメタに触れるようになった人は少なくないはずだ(この辺の体感する音楽云々の話は何度も取り上げているけど南田勝也「オルタナティブロックの社会学」に詳しい)。端的に言うとマキシマム ザ ホルモンが今ここまで大きい存在になっていることが、ベビメタが受け入れられる素地になっていたんじゃないかと考えられる。
メタルと言いながらそのサブジャンルを押さえているから色々な層にアプローチでき今のファンの多様さに繋がっているのもその通りなんだけど、その中でもとりわけヘヴィロック・メタルコア・ニューメタルと称される今っぽいフェス対応の曲が多いこと自体がまず国内での人気の広がりに貢献している、というのは見逃せないんじゃないかと思うわけ(因みに、海外で日本のV系バンドががんばっているというのも大きいじゃないかとも感じている。DIR EN GREYなんかはメタル系のフェスにもよく出てる。)。
もちろん年季の入ったメタラー諸兄にもウケる出来になっているのは今まで言ってきた通りなので特には語らない。昨年から続けてきたオマージュ・元ネタ深掘りをご参照頂ければ。
●ライブの話~興業のプロ・アミューズ~
ベビメタのライブは本当にすごい。これは単独ライブに行ったことのある人ならわかって貰えると思うけど、エンターテイメント性を徹底的に追求しており、そのためにMCを排除してムービーを通じて世界観を作ったりドレスコード(1万人全員コルセット着用)、惜しげも無く使われる特殊効果などとにかく作り込みが凄い。
ただ、ベビメタのライブだけが凄いんじゃなくて、アミューズ所属のミュージシャンの多くが行う大規模コンサートは凄い演出をする者が結構ある。Perfumeなんかも言うに及ばずだし、昨年12月に話題になった福山雅治の男性限定コンサートもだし、サザンオールスターズも復帰後すぐのスタジアムライブではわざわざ松茸とアワビの巨大オブジェクトを作成して激突させるというとんでもない演出をしていた。とにかくアミューズはコンサート・ライブの質の追求にはこだわりがある、というのが実感。
そう考えるとSEKAI NO OWARIのマネジメントをする株式会社TOKYO FANTASYが昨年アミューズの連結対象子会社として設立されたというのはとても納得のいく話である。
余談だけど、アミューズは昨年の紅白歌合戦に単独事務所としてはジャニーズ事務所の6の次に多い5ミュージシャン(セカオワ含む)が出ている。昨年BABYMETALがNHKで特集されたにもかかわらず紅白歌合戦に出演しなかったのは、単純に事務所のパワーバランスへの配慮・枠がないとかそういった問題だったのではないかという気もしてくる。
ともあれこういったステージのすごさは実物を見て色々感じてほしいところではあるんだけど、ライブは当面無いのでBlu-rayなんかで見て頂ければ良いんじゃないかなw
しかしこの「黒の夜」の入場シーン(2:00辺り)、あからさまにスターウォーズだろwww
●メンバーの話と神バンド
次はメンバーの話。冒頭でも話したとおり、ベビメタはSU-METALの類希なる歌唱力を活かすことを念頭に置いて作られたユニットである、というのはとても重要な話。2008年に可憐Girl’sでデビューした頃から既に凄いと言われていたそうで、確かに歌上手い。個人的には↓が一番よくわかるんじゃないかと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=qoS_ASvr-7w
しかしYUIMETALとMOAMETALも存在感は確実にある。フロントダンサーみたいな形でSU-METALより前に出てきて踊っているのが大きいかも。意外にこういう形って無いような気がする。
それから神バンド。その筋の人には日本国内屈指のプレイヤーを集めた存在として知られており、今やベビメタのライブには欠かせない存在になっている。しかし、ベビメタが世界的に広まる過程で「神バンドが本格的だったから」という理由付けがなされるのは若干違うんじゃないかな、という感じがする。なぜなら海外の人達に繰り返し再生された「ド・キ・ド・キ☆モーニング」や「ギミチョコ!!」のMV(の中身たるCD音源)には神バンドの演奏は一切無く、打ち込みで音源が作られているからだ。外国で受け入れられた大きな要因は(日本でもそうだけど)やはりコンセプトや楽曲の新規性と、SU-METALの歌唱力、そしてメンバー3人のダンスパフォーマンスなのではないかと。ただし、その後実際に外国でライブを見せるに当たってはやはり生バンドは必須だっただろうし(ライブだと特に音の違いが際立つ)、内外問わず実際にライブを見た人に「演奏も凄かった!」と思わせベビメタの価値を高めるブースター的な存在になっているのも間違いない。実際に武道館のライブCDが日本国内で1週間で2万4千枚も売れたのは、「神バンドが演奏している音源が今までなかったから」というのが大きな理由だろう。
●BABYMETALから何を学ぶか
長く書いてきたのでまとめるけど、正直に言うとBABYMETALの成功から学べることというのは当たり前なことばかりである。
- コンセプトを守り、極端と評されるくらいにコンテンツの質を高めた。
- リスクヘッジをしっかりして立ち上げ、反応を元に適切なタイミングで売り込んでいった。
- 音楽面ではオーディエンスの流行なんかも(少々は)意識されていた
あまり面白くない結論になってしまいそうだ…笑。まあそもそも「いやこれ違うだろ」みたいな文章を見て勢いで書いた文章なのでしょうがない。ただし、自分がいつも考えていることを体系立てることが出来たので、満足しているwただし、こう書いてみたものの、それを愚直に追究できるところと言うのは少ないように感じられるところで、そう考えるとやはりアミューズの懐の深さと軌道修正力など含めた組織的なノウハウには色々と学ぶところは多いんじゃないかな、ということを感じた。アミューズの企業研究本とか誰か作ってくれないかな〜笑
4月 21 2016
BABYMETAL「METAL RESISTANCE」はどういうアルバムなのか
BABYMETALの新しいアルバム「METAL RESISTANCE」、びっくりするくらいに売れている。
日本では3代目J Soul Brothersのニューアルバムと同時発売だったため順位は2位だったが、1週間で前作の累計売上を上回る13.7万枚の売上をたたき出し、2週目も2万枚3週目1万枚でもしかしたら20万枚行くんじゃないの、ってペース。さらには日本だけにとどまらず米ビルボードで39位(日本人のベスト40入りは坂本九以来53年ぶり)、英オフィシャル・チャートでは15位など、各国で高順位につけている。南米や北欧などのメタルが盛んだけどプロモ足りてない地域ではそれほどでもないけど、それにしてもすごいセールスであることは間違いない
このアルバムのインパクトについては(かなり大風呂敷広げた記事だけど)柴那典さんが書いているし、全世界同時発売日の翌日に行われたウェンブリーのライブについても行った方が空気感の伝わる参加記をしたためてくれている。そしたら僕はアルバム自体についてまるっと書いてみますか、という結論に至った。なので書く。
まず全曲簡単に総ざらいして、そのあと全体の方向性とかを読みたい。
●ド・キ・ド・キ☆全曲解説
これでは前のアルバムではないかというのはその通りだと思います。MVと参考動画でYouTubeを貼りまくったために重くなっちゃってごめんなさい。
1:Road of Resistance
この曲については前に解説記事を書いてるから詳しくはそっちを参照してちょ。初出は2014年の1stワールドツアー追加公演ファイナルにあたるロンドン公演。ドラゴンフォースのサム・トットマンとハーマン・リが参加しているバリバリのパワーメタル。シングアロングで盛り上がるんだけど、背中を押してくれるかのような力強さを持つメロディがシンプルに好き。いい曲だと思います。
2:KARATE
MV作られてるのでこの曲が多分リードトラックその1。初出は2015年のJAPAN TOURファイナルの横浜アリーナ公演。ゆよゆっぺによる、彼が前作で手がけた「悪魔の輪舞曲」みたいなメシュガーっぽいジェントにソイルワークみたいなメロデス風味を足し合わせた重厚な曲。MIKIKOMETALによるMVの振り付けは、同時期に出たPerfume「FLASH」のそれと好対照になっていて面白い。
3:あわだまフィーバー
「ギミチョコ!!」を作曲した上田剛士による、MAD CAPSUKE MARKETSを彷彿とさせるインダストリアルメタルチューンその2。初出は2014年の12月に開催されたファン限定イベント「APOCHRYPHA−S」。「ギミチョコ!!」と同じで、歌詞にほとんど内容はない(笑)。それからBPMが220から180に落ちてるがその分ドラムの音数が増えているのでそんなに遅くなったようには聞こえない。
4:ヤバッ!
「KARATE」同様ゆよゆっぺ編曲によるエレクトロニコア/ピコリーモ(メタル・ハードコア+エレクトロチューン。例:Fear, and Loathing in Las Vegas、Crossfaith)チューン。スカのリズムが入っているのはメタルとしては珍しいかもな、と感じるところ。初出は2015年6月の2ndワールドツアーファイナルの「巨大天下一メタル武道会」で、その後ファンクラブ限定ライブにあたって行われた楽曲リクエスト投票時には「違う」というタイトルだったので、長らくそっちの方で呼ばれていた。なんだかんだで未だにレコーディング音源の半数以上が打ち込みで作られているベビメタの曲だが、その中でも一番打ち込み要素が高いと感じられる曲。
5:Amore – 蒼星 –
扱いとしてはSU-METALのソロ楽曲(YUIMETALとMOAMETALの声が入っていない)。「イジメ・ダメ・ゼッタイ」や「紅月 – アカツキ -」のアレンジをしていた教頭による、それこそ「Road Of Resistance」以上にDragonforceっぽいド直球のパワーメタル。いたるところにDragonforceっぽい早弾きやピロピロギターが出てくる。タイトルから察しがつくと思うけど「紅月」と対になるような曲。歌詞もそんな感じで、紅月同様ベビメタにしては珍しいラブソング。
6:META!メタ太郎
タイトルから「いったいどんな曲なのだろう…」と思われてたこの曲、蓋を開けてみたらヴァイキングメタルだった。ヴァイキングメタルというと僕はコルピクラーニばかり思いついてしまうんだけど、そこまでフォーキー(民謡風)でもないなあ。因みに、日経エンタテインメントのインタビュー記事によると、男声バックコーラス(と言っていいのか)は実際にスカンジナビアのヴァイキングの人たちに歌ってもらったとのこと。SU-METALの今作のお気に入りソングだとか。曰く「BABYMETAL史上最もかわいい曲じゃないですか(笑)?」と。お、おう……
ただやっぱヴァイキングといえばこれだよな〜〜あんまり近くないけど(貼りたいだけ)
7:シンコペーション
7曲目は国内盤と海外盤で全く違う曲が収録されており、こちらは国内盤限定収録の曲。シンコペーションとは何かということについては前に書いた記事を読んでください。次の小節から音を先取りすることで結果的に前のめり感を出す効果があるわけだけど、そのシンコペーションをメロディに多用しつつ歌詞もその「前のめりな心情」を出したものになっているという、ダブルミーニング的な楽曲。楽曲については実は一番メタルっぽさが薄いというか、V系メタルとかジャパメタとかそういう感じで、わりかし普通のJ-POPっぽいなあって感じの曲。いたるところに入っているシンセはcoldrainとかCrossfaithあたりにありそうな感じ。
7:From Dusk Till Dawn
海外盤で「シンコペーション」の代わりに収録されている、全編英語詞の曲。ディスクユニオンとかHMVで普通に輸入盤売ってるからそれ買えば聴けるわけですが。ちなみにタイトルは某映画からそのまま持ってきているという…笑。楽曲の分類としてはゴシックメタルという感じで、エヴァネッセンスとか辺りが近いかも。
実際の曲はこれの10倍くらい緩急がついた感じです。
8:GJ!!
YUIMETALとMOAMETALの「BLACK BABYMETAL」の楽曲。前作収録の「4の歌」を彷彿とさせる三三七拍子からのスタートだが、中身は「おねだり大作戦」を彷彿とさせるラップメタル。今回もやっぱりリンプ・ビズキットっぽいですねwwちなみにこの曲は実質ファンクラブである「THE ONE」のメンバー限定盤では歌詞が全く違う「GJ!-ご褒美編-」というバージョンが収録されている。
9:Sis. Anger
こちらもBLACK BABYMETALの楽曲。というかタイトルだけでわかる人にはわかるんだけど、タイトルはメタリカの「St. Anger」をもじったものだ。
実際の曲調は高速にした「St. Anger」って感じ。最近のメタリカが重厚感を増している代わりにテンポの遅い曲が増えてるのを「こうしてほしい!」ってKOBAMETAL(プロデューサー)が言っているようにも感じた。最初のサビの後に「きらいだ!」連呼が「気合だ!」連呼に変化して「バカヤロ〜」ってなるのは本当に最高だ。冗談の温度感が変わってないと、なんか安心する。
10:NO RAIN, NO RAINBOW
今回収録されている楽曲群の中では最も古くから存在していた曲で、初出は2013年のNHKホール公演「LEGEND “1999” YUIMETAL&MOAMETAL聖誕祭」。呪いにより蝋人形にされてしまったYUIMETALとMOAMETALを救うためにSU-METALが歌った曲というのが公式設定。なぜかファーストアルバムには収録されず、その直後の武道館公演で演奏されたけど、その後も見かける機会はなかったところで復活。武道館のライブが映像パッケージ化された時に初めて曲名がわかったのだが、それまではサビの歌詞から「止まない雨」と呼ばれていた。そう、Xの「Endless Rain」である。
11:Tales of The Destinies
タイトルが運命のRPGなのは色々大丈夫なのか。複数形だからいいのか。それはさておき、変拍子・テンポ変化などめまぐるしく色々変わっていく、ライブでやるのがめちゃくちゃ大変そうなプログレッシブメタルチューン。というかもろにドリームシアターっぽい曲である。笑
この後次の曲に間髪入れずに突入していくので、2曲繋がっているように聞こえるが、それもそのはずで元々一つの組曲みたいにしようと制作していたとのことである(なので作詞作曲アレンジ演奏、全て同じメンバーでやっている)。
12:THE ONE
アルバムのグランドフィナーレを飾る壮大なメタルバラード曲。初出は「KARATE」同様に2015年のJAPAN TOURファイナルの横浜アリーナ公演。MVもそのときの映像がベースになっている。
タイトルは勿論メタリカの「ONE」から取っている。ただタイトルとして拝借した程度の印象が強く、実際には大団円の締めのために練り込んで作った曲、という感じ。これも「Road of Resistance」と作曲者が同じなのでメロディが良い。Mish-Mosh氏、何者なんだろう…と思って調べたら出てきた。二人組のユニットなんですね。
因みにこの曲には3つのバージョンが存在する。国内盤の通常バージョン、海外盤の「English Ver.(英語バージョン)」、ファンクラブTHE ONE限定盤の「Unfinished Ver.(ピアノ+ストリングスアレンジ)」だ。先日NHKで放送されたドキュメンタリー「BABYMETAL 少女達は世界と戦う」では、Unfinished Ver.が披露された。
因みに今作では一部楽曲において楽器もスタジオ録音されている。特にドラムが生録されてる曲が3つあるというのは相当な進歩だろう。因みにライナーノーツにはその辺何も書いていないので、参加ミュージシャンの自己申告しか当てにならない。Dragonforceの二人以外だと、神バンドのメンバーでもあるLedaさんとゴールデンボンバーの楽曲もアレンジしているtatsuoさんの2名が参加曲をツイートしている。
●アルバムの狙いを勝手に読み解く
先に全体的な感想を書くと、「今までの流れを維持しつつスキル・会場のスケールアップに伴って曲を作った、世界に向けたアルバム」というものだ。
このアルバムで核になっていると考えられる曲は、「Road of Resistance」と「THE ONE」の2曲だ。この2曲のMVはどちらも、日本国内で行われた大会場ライブの映像を使っている。「Road of Resistance」のシンガロング(合唱)の部分なんかは特にそうなんだけど、とにかく大会場で映えることを念頭に置いて作られている曲だという印象を受けた。率直に言うと今ツアーのスタート会場であるウェンブリー・アリーナとファイナル会場である東京ドームを相当に意識して作っていると言える。逆に、それ以外の曲についてはそこまでやることが変わっているわけではない、という感じ。新たにやったヴァイキングやゴシックも、前作の「メギツネ」とかの飛び道具的な曲の位置付けかな、という印象。例えばGJもおねだり大作戦のアップデートっぽいし。なので、今までの流れを維持しつつ会場規模に合わせた、という話になる。あとはバラードが入っているので前作より緩急ついてて聴きやすく感じる人も多いような気がする。
じゃあ何が世界に向けた要素なのか。それは海外盤の内容、というより海外盤限定で収録されている全英語詩の2曲。聴いて感じたのは英語の発音を相当トレーニングしたんじゃないか、ということ。非公式なのでいつ消えるかわからないけど↓をご覧くだされ。
https://www.youtube.com/watch?v=S3Q6iJE15-w
最近だとワンオクやセカオワなんかが歌唱時の英語の発音を鍛えてネイティブから聞いても不自然さをあまり感じないようにしているって話が聞かれる(セカオワについてはリアルサウンドで柴さんが指摘してる)けど、ベビメタもそうしているんだろうな、と。そして今指摘した3組の共通項はアミューズ(もしくはその関連会社)所属であるということ。もちろん他にも英語を鍛えて世界に繰り出しているバンドはあるんだけど、アミューズは会社として狙ってるんだな、という感じ。(なのでPerfumeも今作で1つくらい英詞曲出すかなと思ったけどなかった。)なので、全体の構成とか英語詞曲のクオリティとかを考えると海外盤の方がPRIMERY VERSION、つまり表バージョンなのではないかな、というのが率直な感想。まあ自分が「From Dusk〜」好きなだけかもしれないけど。
そして4月20日〜21日に行われたファンクラブ限定イベント「APOCRYPHA – Only The FOX GOD Knows –」に行ってきた。国内では初演奏となるアルバム新曲も何曲か演奏されたが、ウェンブリーの時も含め、まだやっていない曲が数曲ある。おそらくダンスの振り付けがまだできていない(Tales〜に関しては練習も終わってない?w)ということだろうけど、既に発表された曲達も同様にインテンシティの高いパフォーマンスだった(それから「THE ONE」がEnglish Versionだった!!)ので、未発表の曲を見るのが楽しみ。そして今月のライブで初披露された曲達もツアーで練度が高くなっていくだろう。東京ドームまであと5ヶ月、当面見る予定はないけど期待して待ちたい。
いろいろ書いてきたけど、ベビメタに関して思っているのは突き詰めると一言に集約される。
行けるところまで行ってくれ!!!
By たにみやん • BABYMETAL, Music • • Tags: BABYMETAL