12月 16 2013
2013年マイベストディスクトップ20 20位〜11位
さて、マイベストソングトップ10(冷静に考えたら1曲インスト入ってたけど)も発表し終わったところでいよいよ本番、今年のベストディスクの発表に映りたいと思います。今年はめちゃめちゃ豊作だった。単純に僕が聴いた数が例年の1.5倍(70枚くらいかな)っていうのもあるんだけど、それらもそれぞれハイレベルで、正直かなり順位つけるのに迷った次第。というかベスト10選出し終わった時点で大量に紹介したい次点が出てしまったのでじゃあいっそのことこれにも順位を付けてベスト20にしてしまおうと。笑
というわけで、基本的なルールは今年発売されたアルバム(ミニアルバム含む)からの選出。
因みに過去のランキングはこちらからどうぞ。
2010年のランキング 1位:サカナクション「kikUUiki」
2011年のランキング 1位:レキシ「レキツ」
2012年のランキング 1位:cero「My Lost City」
あらかじめ言っておくと今までのランキングに比べて2013年のランキングはちょっと違う趣があって、比較的通底したテーマみたいなものが感じられるようになりました。
それではまず20位から11位、一挙発表。
20位:UNISON SQUARE GARDEN「CIDER ROAD」
UNISON SQUARE GARDENの4thアルバム。1st以来久しぶりにお買い上げしたのはベースの田淵さんが近年主張している「アンチ一体感至上主義」に多いに共感しているからというのがあった。んで、アルバム聴いてみたらまあ確かに3ピースでこれだけ迫力のある音を出せるんだったらお仕着せの一体感なんていらないよな、と素直に思った。1stの時よりも音の凄み、迫力というのは確実に増してて、もともとメロディはいいバンドだったからこれは鬼に金棒じゃないですかと。みたいな話を発売してちょっとした頃に書いた。笑。もうね、最初の「to the CIDER ROAD」「ため息 shooting the MOON」「リニアブルーを聴きながら」のキラーチューン連発でもう持ってかれるよね。
そんで先月久しぶりにライブ見たんだけどライブもまた勢い増してた。単純に上手いし。そりゃあ身体も動くよ。でも確かに自由に動く余地を残してる感じもあるよね。ギターロックって進歩が無いみたいなことをこの前言ったけど、彼等は確実に日本のロックを更新している貴重な存在だと思う。
19位:高橋幸宏「LIFE ANEW」
高橋幸宏さんの音楽を聴くのは原田知世さんも参加したpupa以来か。あれは1stはなかなか面白いなと思ったんだけど2ndがちょいとイマイチだったな…さて単独のアルバムを聴くのは初めてなんだけど70年代あたりのオールド・ロックみたいな意匠がありつつすごく上質感がある。和製英語的な意味でのAORって言葉がピッタリ合う作品だと思った。それでいて決して古臭くないし。その辺は毎年ワールドハピネスを主催していることにより得たもののフィードバックなのかな。今年は海外勢ではポール・マッカートニーの来日+ニューアルバムなどをはじめ超大御所がすごく元気な年でもあったけど、それは国内でもそうだよ、っていうのを見せつけてくれる作品だったな。
18位:OK?NO!!「Party!!!」
レジーさんのブログを読んでBandCampから購入。まあ去年もそういう類の買い方をしていなかったわけじゃないんだけど、本当にネットにしか音がないインディーズバンドの音源を買うのは今回が初めてかもしれない。しかしながらRadioheadの「In Rainbows」よろしく自分で値段を付けてダウンロードしてねっていうのがすごく今っぽい。
音に関して言うと、彼等はCymbalsの影響をものすごく受けてて、それがCymbals大好きで全CD収集するくらいどハマりした僕にはツボなわけ。この手のサウンドには抗えない自分。とまあ、そういう補正は抜きにしても、直球のポップスに少しのスパイス的なこしゃまくれ感みたいな組み合わせがハマる人は結構いるんじゃないかと思う。Cymbals解散からもうすぐ10年になるけど(それ自体割と驚きだ…)、こうやってDNAが継承されてアップデートされて行くっていうのはいいことだね。
SoundCloudで発表されてた新曲もすごく良かった!
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17位:サカナクション「sakanaction」
僕がサカナクション大好きだというのはたにみやんフリーク(いるのか?)の皆様なら周知の事実だと思いますが、それでもこの新譜はこの位置です。決して悪いわけではない。いやむしろ僕としては横ノリできる曲多いのでかなり好みではある。しかし今年は他がよすぎたなというのと、音がちょっとスカスカな気がしたのとライブでのダンスフロアタイム(一部ファンの間ではハイパーサカナクションタイムとも言われている)との乖離とかを考えるとこのバンドはもうCD音源だけではもう捉えきれないんじゃないかなあという感想とでこの位置。良くも悪くも。まあこれが出た時にどう言えばいいのかわからなかった様子は過去記事をご覧ください。笑。
16位:ももいろクローバーZ「5TH DEMENSION」
このアルバムについては既に過去記事で散々書いているんだけど、改めて言うと「モンスターアルバム」なんじゃないかな。完全に異形。これでオリコン1位とって20万枚売ったという事実がすごい。それこそ過去記事で指摘した「渋谷系で見られた予定調和の逸脱が現代はアイドルで見られる」の最も典型的な姿なんじゃないかな。次にどうなるかと思ったら仏教世界に行っちゃってるし(個人的にはカップリングだった怒髪天提供の太鼓の達人コラボ曲がすごく好きだった)。ももクロよ、これからどこへゆく…
個人的には「5 The POWER」と「灰とダイヤモンド」がアルバム新曲の中では良かったです。あ、あと「月と銀紙飛行船」のイントロがビートルズの「Starawberry Fields Forever」なのは良かった。曲の中身はともかくとして。
15位:NONA REEVES「POP STATION」
マイケル・ジャクソン評論家をしながらV6やNegiccoなどに楽曲提供をしている西寺郷太さん、数々のミュージシャンのバックで演奏する奥田健介さん・小松シゲルさん、といった具合に近年外のお仕事が超多いノーナさん。今回のアルバムはその「外のお仕事」がいい塩梅でフィードバックされているなあというのが過去のアルバムと聴き比べるとよくわかる。ノリの良さや、ベースやドラムなどのリズムトラック部分の出来が昔より良くなったなあと思った。特に冒頭曲「P-O-P-T-R-A-I-N」の出来は白眉。
14位:Shiggy Jr.「Shiggy Jr. is not a child」
その後Youtubeでも観たけど。そしたらすぐにアルバム出るって話だったから即買い。この人達についてはまだインタビューとか全く出回ってないからルーツとか人となりとかよくわからないんだけど、とにかくここ20年くらいのポップロックのいいとこ取りをしている感じがある。OK?NO!!といい、こういうかわいらしいポップスが再び響く時代が来そうになってきているというのであれば、それは大変喜ばしいことなので全力で応援します。
SoundCloudで全曲かなりの部分を試聴できるけど、それでもやはり手元において聴きたいと思わせる吸引力があるね。
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13位:私立恵比寿中学「中人」
エビ中の中人チューニング中…いやまあこのアルバムもまたももクロ同様ジャンルなんて知るかと言わんばかりの縦横無尽っぷりを見せてるんだけど、ももクロみたいに聴く人を突き放すかのようなストイック路線ではなくむしろ王道ポップス路線。しかしその上でほんとどの曲も良い。みんなエビ中との共同作業を楽しんでいるんだろうなあと思わせる出来。
杉山さんの楽曲や、我らが池ちゃんの楽曲もいいんだけど、抜群にいいのはたむらぱん提供の「誘惑したいや」。個人的にはヒャダイン楽曲はそこまでグッとこなかったというか他の曲達の王道感からしたら邪魔な気すらしたくらいだった。
12位:きゃりーぱみゅぱみゅ「なんだこれくしょん」
これについてもかつてレビューを書いたんだけど、この前参加したさやわかさん主催の座談会で90年代〜2010年代の音楽の変化・特徴の主要な部分(DJ・渋谷系・音響系・EDM)を中田ヤスタカが包摂している、という話になった。その辺が端的に出てるのがこのアルバム。音響系はCAPSULEでだけど他はまあ割と入ってる。前作にまして実験色が強い「インベイダーインベイダー」「み」と、小室哲哉・浅倉大介や90年代シーンへのリスペクトと思われる「さいごのアイスクリーム」「おとななこども」なんかとが同居しててすごく面白い、聴きどころ満載のアルバム。
11位:住所不定無職「GOLD FUTURE BASIC,」
住所不定無職はデビュー盤のジャケット写真でビートルズの「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」のコスプレをしてたけど曲がなんかかき鳴らす感じでお世辞にもうまいとは言えないっていう感じでその地に足の着いてない感じが悪い意味で名は体を表すバンドだなあっていうのがファーストインプレッションだったんだけど、その見方はこのアルバムで180度ひっくり返されてしまった。
このアルバムがギターとかのザ・ゾンビーズ子の豊富な音楽知識をベースにしていてそこにカジヒデキや沢部渡(スカート)が絶妙な味付けをすることによって成り立っていることについてはele-kingに寄稿されている竹内正太郎さんのレビューを読んでいただければ。ホント「古着でコテコテのサブカルな感じだったはずの子がパーティ衣装を着てきたら見違えた」みたいな衝撃はあるし、それこそ今までの様々なポピュラー・ミュージックの要素を取ってきてそれをごった煮じゃなくアーバンなディスコミュージックっぽい感じにスタイリッシュにアウトプットした感じはさすがという他ないでしょう。聴いていて超楽しくなれるハッピーミュージック。これもまた今と昔が交錯するタイムレスな音楽がたくさん奏でられた2013年の象徴的な作品なんじゃないかな(はいまた象徴入りました〜)。
ここら辺のアルバムも、例年ならベスト10入りしてもおかしくないレベルのものが多い。ホント今年は良いCD多かった。
全くその通りです。
ではこれらの良作達をかいくぐってベスト10入りしたCDはいったいどんなラインナップなのか。トップ10は5枚ずつ発表いたします。お楽しみに。
6月 15 2014
レキシの「レシキ」に見える音楽の「温故知新」
レキシの4枚目のアルバム、「レシキ」が発売された。
レシキ(DVD付)
ただ日本史のことを歌い、そこに古今東西のポップミュージックのエキスを注入して全力で「音楽で遊ぶ」というコンセプトのユニットがここまで続くとは驚きというほか無いけど、今作もそのコンセプトを忠実に守りつつとてもクオリティ高く、それでいて笑える作品群に仕上がっている。過去最多とも言えるゲスト達がその素晴らしい「遊び」に花を添えている。レキシネーム考えるの大変だっただろうな…それにしても「旗本ひろし」とかクール過ぎる。
と書くとそこで終わってしまうので、今回のアルバムではレキシが音楽的にもレキシである面が一層際立ってたなあと思うわけで、その辺りについていくつか説明したい。音の温故知新。
●レキシとシティポップと江戸時代
今回のアルバムを聴いて感じたのは これまでSUPER BUTTER DOG時代から続いてきたファンク的な曲に加えて、70〜80年代辺りのポップス辺りを参照しているなと思われる曲が多かったこと。先日「魁!音楽番付」で鹿野淳さんがレキシの音楽性についてこんなことを言っていた。
まさにその通りで、本人も「今回はポップ」って言ってるけど、今回の曲はAOR~シティポップの流れに位置づけられるものがこれまでより多いように感じる。1曲目の「キャッチミー岡っ引きさん」なんかはサビの後半の展開からして80~90年代の女性シンガーソングライターが歌ってもおかしくないような曲だし、9曲目の「ドゥ・ザ・キャッスル」なんかはホーンアレンジとか含めて率直に言うとY.M.C.A.っぽいと思った。
この辺、意図したかどうかは別として曲の殆どが近世(戦国・江戸)になっていることからというのは大いにありそうだ。10曲の内戦国より前が1曲、戦国時代が2曲、江戸時代が6曲、戦国〜江戸の辺りが1曲。江戸時代というのは大都会江戸(東京)が成立した時期でもあって、そういう文化史的な側面も踏まえてのアレンジ……というのはさすがに大げさに考えすぎかな。
とはいえ池ちゃんの中で今のモードがファンクよりもAOR/シティポップ方面にありそうなのは、私立恵比寿中学への提供曲からも浮き出ている。特に初提供作「頑張ってる途中」以上に昨年秋の「U.B.U.」は70〜80年代辺りのポップスを参照している感じがする。イントロなんてフィンガー5っぽいと思う。
こういったシティポップ回顧みたいなものについては別にレキシだけの話ではなく、最近インディー界隈で何度も言及されたはっぴいえんど回顧もそうだし、tofubeatsが引っぱった90年代回顧もそうだ。特に最近の話で言うと、Especiaのアルバムなんかはサウンド的には80’sのフュージョンベースのシティポップを思いっきり参照してきてるわけで。(個人的にはそこからヴェイパーウェイブだ!とかもてはやすのは違和感があるんだけどそれは別の話。仕掛け人が意図的にやってるのは理解してるけど)
YouTubeやネット配信で昔の音楽へのアクセス環境が向上したとかもあるけど、そこからシンプルに「カッコいいと思うポイントを抽出してアップデートする」ことの才能、というのがここ最近で評価を得ているんじゃないか、ということも思ったりする。
●全曲簡単レビュー
お気に入りのミュージシャンだとこういうのをやるのが定番になってる気がするけど、語りどころが色々あるアルバムなので早速。試聴も付けときますね(環境により聴けないこともあるかも)。
明るい曲調と大々的に取り込まれたホーンズ、そして後半のサビ展開など、今作の方向性を端的に示している曲だと思う。しかしもち政宗の声のかわいらしさは反則ですよね。後半コーラス抜きで歌うところがたまらなく好き。
曲名の元ネタはスピルバーグ監督の映画「Catch me if you can」か。
シティポップ調で綺麗な声で歌わせるならまさにこの人!という人選。そして「年貢の納め時」からきた祝言ソングという構図は恐れ入る。
まさかのジャズ調。因みに生類憐れみの令は喧嘩両成敗的な思想から来る「安易に人殺ししちゃう風潮」に釘を刺す側面が強かったという説。その辺も踏まえたという池ちゃんの弁(今月のQuick Japanより)。ほんまかいな…w
参考文献↓
生類をめぐる政治――元禄のフォークロア (講談社学術文庫)
喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)
曲名の元ネタはスターウォーズで霊体化したオビ=ワン・ケノービがルークに向けて発したセリフ「Run Luke Run」だそうな。1作品1曲くらいはあるドライブソングっぽい曲。これもまたシティポップ感ありますな。
元ネタは1970年代のファンクロックバンド「Sly & Family Stone」なのだろうか。QJの池ちゃんコメントによると「何かを動かす原動力について歌ってる、FIGHT THE POWER(パブリック・エネミー)な曲」とのことで、「へいへいはいちろー!」とか歌ってるとなんか楽しくなってくるし力が沸いてくるような気がする。笑。あと少し「ジンギスカン」っぽくもある。
昨年の冬のライブツアーで披露されていた曲で、QJではニール・ヤング&クレイジーホース風と紹介されてた。なるほど確かに。
5曲目と同様の、今回のファンク枠。ワンコード繰り返してグルーブ感出す、という意味ではよりこちらの方がファンク感強いかな。シャカッチもいて、という辺りも含めバタードッグ的な感じする。
腹筋崩壊。
一発録りでやっているだろうからライブでの再現は極めて困難なのではないかと思うし、やったとしたら多分全く違う物になりそうな気もする。
「Y.M.C.A.」的なディスコチューン。増子さんだけににオファーしたはずなのに「俺にもレキシネームくれ」とついてきた怒髪天メンバーのコーラスが良い味を出している。特にハゲノウズメ(坂詰さん)の「大手門!」が最高。増子さんが「俺の城〜」と歌う部分のメロディも素晴らしい。Tr1・Tr5と並ぶ今作のベストトラック。
レキシのアルバムは、最後に比較的落ち着いた曲が入る傾向があるのだけど、今回もしっとりとしたバラード。ちょっと男色を連想させる歌詞は1st「レキシ」の「兄じゃ、I need you 」を意識していたりするのかな。
●レキシの未来
「歴史の未来」なんて矛盾してるんじゃないかという話はさておき。アルバムはオリコンウィークリーランキング7位、ニューアルバムと同時に発表された日本武道館公演は一般発売されたチケットが即日完売。本格始動後初である、3年前の新代田FEVERのライブの頃から見てた身としては率直に驚きだけど一度見たらまた見たくなるのは間違い無しなのがレキシのライブ。CD音源以上に音楽で遊び、しまいにゃ色んな歌を勝手に歌ったり変え歌したりするために権利関係に引っかかってしまうため映像パッケージ化されたこと無いしこれからもされる可能性は低い。でも逆に、「一期一会の保存不可能なライブ」が重視されていると言われている最近の世の中で、レキシは圧倒的に正しいことをやっているのではないだろうか。音楽で遊ぼう、歴史と遊ぼう。キャッツ!
By たにみやん • Music, レキシ • • Tags: Especia, レキシ, 私立恵比寿中学