12月 27 2012
たにみやんセレクション「2012年ベストアルバム10」
今年もたくさん音楽を聴いたもので、色々ライブに行ったけど、ここいらでまず自分的にどれが良かったのかを確認してみようと思う。毎年恒例ですな(去年のブログからのコピペ)。
今年買ったアルバムは52枚。そのうち今年の物は38枚。その中から特に良かった10枚を選択するの巻。ではさっそくGO。
10:SCOTT GOES FOR「SCOTT GOES FOR」
元Cymbalsの沖井礼二・NORTHERN BRIGHTの新井仁をはじめ、実力派のベテランバンドマン達が集合して作られたバンド。元々は1970年代のロックを演奏するコンセプトの「1970’s」というバンドだったんだけど、思いの外このメンバーでの演奏が良かったために本格的にバンドとして音作りを始めたというだけあって、とにかくバンドとしてのまとまりはめちゃめちゃいい。いい大人達がやんちゃなロック少年に帰っている感じ。とはいえ、その音楽性・レベルはやっぱりアダルト感あるというか、「大人のためのロック」みたいなところはある。若い人ウケはそんなにしなさそうだなとは思いつつも、沖井さんのボーカルいちいちツボだったりするので引き続き活動を見て行きたいところ。ライブのUstream中継も頻繁にやっているのでぜひ見られたし。
ところで沖井さん、ソロプロジェクトFROGの方はいつ次のアルバム出ますか……w
木箱は本当に北海道ローカルにしておくにはもったいないと思うくらいに曲のクオリティが高くて僕好み。メルヘン系エレクトロニカとでも言えばいいのかな。テクノ系よりよっぽどエレクトロニカという言葉はふさわしいと思うんだけど、とかそういうジャンル論を話していると宗教戦争に陥るとやめておこう。さてこのアルバム、初めての自主レーベルということで期待していて、まあいつも通り良かったなあと思うけど、ちょっとミックスの都合かボーカルが強い気がした。どちらかというとボーカルも楽器の一つくらいにとらえてたと思っていたので意外。あとは歌い方の変化もあるかな。前はもう少し流してたような。とはいえ、打ち込みで作られた幻想的な音とボーカルの調和は及第点だと思うし、もっと聴かれてもいいんじゃないかと思う。
怒髪天って個々の楽曲はいいのになんでアルバムになると微妙なんだろうなあということを「トウキョー・ロンリー・サムライマン」より後のアルバムにずっと思っていたのだけど、久々にいいのが出てきた。というかおそらく、東日本大震災後に怒髪天の楽曲のクオリティはものすごく高まったんじゃないかなあと思ってる。先行シングル「走りつづけるかぎり」のカップリングだった「DO RORO DERODERO ON DO RORO」も琵琶の音を上手く取り入れていて和のにおいのするまさに「侍ロック」と呼ぶにふさわしいクオリティだったし。彼らの使命感と普段のスタンスとかが上手くかみ合ってる時期なんだろうな、と思う。その割になんかライブ行ってなくてすみませんw
きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ。名前がどうにもふざけているように見えるために揶揄の対象になったりアンチがちょいといたりする(AKB48に比べたらはるかにたいしたことないけど)彼女、僕も最初何となく聴いてなかったけど、SWEET LOVE SHOWERで見てナメてたなこりゃと思ってこのアルバム即買いしたら良かったわけですよ。シングル曲・タイアップ曲が多いというのもあるんだけど、そうじゃないのも含めてアルバム通しで聴いても緩急ついていて非常にいい。特に最終曲の「ちゃんちゃかちゃんちゃん」については中盤以降の間奏に他のアルバム収録曲が顔を出していたりして、なんとも味わい深い。なんか中期(Sgt. Pepper〜White Album辺り)ビートルズの通じるような遊び心があるよねって思ったところで気がついた。中田さんは昔からこういう「アルバムのエンディング・オープニング専用曲」みたいなのを作っていたんだということを。そう、このアルバムは9年前に出たCapsuleの名作「CUTIE CINEMA REPLAY」のようだ。まあこのアルバムではOPENINGとENDINGでそういう小細工してるわけじゃないんだけど、久しぶりにこういう一冊の絵本みたいなアルバムを作ったという事実にちょっと感激しちゃったり、ね。
このアルバムについては既にレビューしているから実際あまり書くことはない。とか言うと怒られそうだから書いとくと、モーモールルギャバンのアレンジ面での飽くなき追求の旅はまだまだこれからも続いていくんだろうなあ、という気持ちを再度確認した次第。そういう意味では彼らは本当に「西のクラムボン」になっていくのかもしれないなあ。あくまでJ-POPでいたいと考えていて3人でできることにこだわっているから、クラムボンのようにジャンルを融解させて室内楽的というかポストロック的な方面にも広がっていくとかそういうことではないと思うんだけど、あくまで音楽に対する好奇心や探究心を持ち続けて更にどんどん変化を遂げながら進んでいくんじゃないかなと思うわけで、本当に毎回毎回聴いてて楽しい。ああ、頼むからライブでもこのアルバムの曲もっとやっておくれ!!盛り上がり重視で旧曲多めなのは分かるんだけどさ!だけどさ!
大震災を経て自分たちの使命感を確認して楽曲の質が高まったのが怒髪天なら、バンドの存続の危機という激震を乗り越えて楽曲の質が高まったのはチャットモンチーといえるだろう。正直に申し上げると「AWA COME」以降のチャットモンチーはどこかぬるく、楽曲にたるみがあるように思えていたが、現在の2人体制になってからの曲は緊張感があってものすごく曲が引き締まっている。これぞチャットモンチーでしょ。「耳鳴り」「生命力」「告白」で聴いてきたチャットモンチーでしょ。あっこちゃんのめちゃうまベースはなくて、それでいてドラムはバタバタしててクミコンよりも明らかに上手くないけど、それでもこの楽曲に漂う凜としたたたずまい、これこそがチャットモンチーの音楽なんだなということを改めて感じた。クミコンが抜けて今まで通りにはできないという切迫感。そこで敢えてサポートなり追加メンバーを入れるという甘えの選択をせずにあくまでバンドの精神を貫いたことによる渾身の成果物。
若手の中でも抜群の注目株だと思うパスピエ。この人達もアレンジが上手くて凄く音が締まっているというか、強さとエネルギーを感じる。 最初の「トロイメライ」→「デモクラシークレット」の2曲が破壊力高くボーカル含めたこのバンドの魅力を十二分にぶつけてきて、そこから緩急付けて聴かせていくという構成が良い。最後の前の「最終電車」が危ういバランス取れているというか、ただハイテンションというわけではないけど盛り上がりはあるしせつなさ成分も混ざってるしでなんともこれまた絶妙なさじ加減。ポスト相対性理論といわれるし僕もそう扱ったことがあるけど、一度聴くと頭から離れない魅力的なバンド。来年は絶対ライブ観に行くぞ。
既にレビューしてるからこれも書きづらいな。笑。なんというかねえ。jizueはとにかく上手いよ。そして楽曲の出来がめちゃくちゃいい。ギター・ピアノ・ドラム・ベースの4つの楽器がものすごく上手く絡み合ってる。ものすごくよくできているという評価に尽きる訳なんだけど、ライブで見てもすごく良いよ。このアルバムで言えばとにかく「Sun」がめちゃめちゃいい曲。アッパーで演奏力見せつけまくりとかそういうタイプの曲じゃなくて、聴かせる曲ながらも、うなるポイントに充ち満ちているというのがもうなんというか感性をわしづかみにしてくれる。まあどの曲もそうなんだけどこれは特に。白眉。来年はもっとライブで見たいぞ!フェスで見たいぞ!
2:レキシ「レキミ」
全力でやりたい放題面白いことやったら突き抜けた名盤になってしまった前作「レキツ」と比較するとどうしても前作に軍配が上がるけど、レキシらしさというか、クオリティとユーモアの両立というのは相変わらずきっちりと満たされててたいしたもんだ。1曲目の「大奥〜ラビリンス〜」から完全にぶっ飛ばしてる。「岐阜県よりお越しの春日局様〜」という風に史実にきっちり合わせながら(春日局は美濃国、今の岐阜県の生まれ)ギャグを挟んでくる。「武士ワンダーランド」ではカブキちゃん a.k.a. Salyuのボーカリストとしての新しい一面にむしろこっちが気付いちゃった!という感じで才能掘り起こしみたいな。しかしこの曲、ファンクの歴史総決算みたいな感じで随所にパロディやら小ネタやらがまき散らされている。タイトルと御意トゥザワールドと切腹マシーン辺りはまあ分かるところだけど、それ以外にもあるみたい。そういう笑いの側面と共に音楽的な見所も多くて特に「暴れん坊将軍」における元気出せ!遣唐使(渡和久from風味堂)ととなりの登呂遺跡(朝倉真司)のコンビネーション・ソロがものすごくグルービーすぎてたまらない。そして正当派ポップスとして珠玉の出来である「LOVE弁慶」を経て壮大なバラード「墾田永年私財法」で締め。ていうかこの曲ものすごく頭に残る。それゆえ墾田永年私財法が743年であることは容易に覚えられる。もしかしたら直接受験勉強に役立つ初めての曲かもしれないけど。他を忘れてしまう危険性はものすごく高いけど。笑。というわけで今作もやはり出来が良くてなおかつ面白いというレキシの矜恃を見せつけられたアルバム。来年も沢山ライブを見ることだろうなあww
今年の1月1日に買ったアルバム、つまり新年初買いのアルバムがceroの前作「WORLD RECORD」だったんだけど、このアルバムを1年近く買い逃していたことを本気で後悔するくらいいい出来だったわけ。そんで4月に見たライブでもずいぶん新曲(というかアルバム未収録曲)をやってたからアルバムは今年のうちに出るだろうなあと期待していたところに、満を持して出たアルバム。前作よりも更にコンセプトアルバム色を増しているというか、本当にアルバム一つが大きなストーリーになっていて、「ワイルドサイド」や「マイロストシティー」 という共通語、そして「大洪水時代」→「船上パーティー」といった「水の世界」感。全ての曲が絡み合い一つのアルバムを作っている感。アルバムとしての出来がものすごく良い。それでいてここの曲がまた魅力的。今まで聴いてきた全ての音楽をリスペクトし、並行的に奏でるかのような新世代ポップ・ミュージック。とにかく「スマイル」と「さん!」にあふれる多幸感が、音楽のすばらしさを雄弁に語ってるともいえる。これぞまさに「音楽」だ!といいたくなる、2012年を代表する1枚。もう一回り聴いた瞬間に思ったよ。
というわけで以上10枚、どれもものすごくよく聴いたアルバム。今年は自分の趣味が「脱ロック」みたいな感じかなと思ったけどトップ10見る限りそうでもないのかな。まあしかしインディポップ寄りになっているのは強く感じるところであり、やはり4・5年くらい前と比べるとずいぶん変わってきてるよなあという当たり前のことを思う次第。
あ、あと次点。
FINAL FANTASY25周年記念のトリビュートアルバム。マズオープニングのスカパラによるメドレーで胸が熱くなる。jizueのFF11メドレーもいいし、栗コーダーカルテットの「ビックブリッヂの死闘」は意外性ありすぎだし、そこで油断しているところにたたみかけられるmudy on the 昨晩のバトルメドレーはとにかくかっこよすぎる。僕らの世代を始め、FINAL FANTASYと共に育ってきた人らにはたまらない一品。他にもSo many tearsとかSchroeder-HeadzとかNabowaとかDAISHI DANCEとかそうそうたる実力派メンツがそろったことにより、25周年を存分にお祝いするお祭アルバムが仕上がりましたとさ。
今年の前半はどうなることやらと思っていたけど振り返ってみると今年も豊作だったね。CD不況とはいわれてるけど、毎年素晴らしい曲ができていることについては本当に良いことだと思うし、来年以降も応援していくのでよろしくお願いしますねー。
5月 1 2013
レジェンドとフェスのストーリーと:ARABAKI ROCK FEST 2013に行ってきた話
4年連続で宮城県のARABAKI ROCK FESTに行ってきた。夏フェスはいつも別の所に行ったりしているけど、春のARABAKIと冬のCDJはずっと行き続けている次第。結構出演者の好みもフィットしてるしね。そんなわけで今年も行ってきましたのでその感想やら思ったことやらを書いてみたいと思う。
今回見たのは下記の通り。
DAY1:パスピエ→KEMURI→the day→EGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXX→くるり
DAY2:怒髪天→the band apart→奥田民生→加山雄三&ARABAKI YOUNG KING BAND→クラムボン→THE GREAT PEACE YOUNG SPIRITS RESPECT FOR 忌野清志郎
1日目は寒くてかなり早い段階で帰った。雨みたいな霧と強風で体温が奪われていくのを実感した。正直に言って辛かった。そして1日目はともかく、2日目は部分的に見る予定だったハナレグミと岡村靖幸を全く見ることが出来ないなど、当初の計画に比べると消化不良感はあった。しかしそれを補ってあまりあるほどの体験をすることが出来たのは確かだ。
●1日目のハイライトの話
1日目のハイライトは、個人的に一番期待していたパスピエ。予想外にバスが長蛇の列でちゃんと到着するか不安だったけど、ついてみたら時間にも間に合って無事見ることが出来て。最新シングル「フィーバー」を先頭に持ってくる気合いのセットリスト。大規模なロックフェスに出るのは初めてという状態ながら、それを全く感じさせない堂々たるステージング。
いやもうなんというか、大胡田さんの笑顔凄かった。完全にこのステージが楽しくてしょうがないという感じで、それに影響を受けた他のメンバーの熱量も大いに増してたしというわけで最終電車では既に僕的にはクライマックスを迎えんばかりの勢いでしたとさ。パスピエは去年知って今年ようやくライブ見てから東京であるライブには全部行ってたけど、着実にブレイクへの道筋をたどっている感じがしたしホントにフェス初出演なの!?というくらいで、相変わらず満足度が高くてこれからの可能性を感じるライブを魅せてくれた。
というとめでたしめでたしみたいな感じだったけど、まあ1日目はとにかくそこに尽きたかな。あとはKEMURIで子連れが多くて子供達がスカパンクのリズムでご機嫌だったことが印象的だったかな。きっとKEMURI解散後に産まれた子達なんだろうなとかそもそもこの子達の親もKEMURI解散後に結婚したんだろうなとか余計な想像をした。the dayは新曲もやってくれたのが良かった。くるりはホント今いい時期だね。演奏に張りがあるというかメンバーがまず楽しめてる。
●2日目のハイライト以外の話
正直に言うと2日目の方が1日目よりずっと良かった。それは天気が良かったから過ごしやすいということもあったけどそれだけではない。それぞれのバンドのアクトのクオリティが高かった。
最初の怒髪天。前半のホトトギス→酒燃料爆進曲→押忍賛歌→オトナノススメの流れは気合いが入りまくりでシビれた。去年の1日目トリよりもずっと良かった。そして、結成30年を控えてついにメインステージで堂々たるステージングが出来るようになったということがまたグッとくるものがあるよね。
因みにこれについては僕も含めてみんな曲知らないもんだからきょとんとしてた。まあしょうがないよね。
それから午後イチのthe band apart。久しぶりに見たらすごく良かった。
2ndから入って遡って1st聴いて完全にハマった人間としてはこのセットリストはもう感激しきりだよなあ。coral reefとかバンアパで一番大好きな曲だし。しかし、客のノリがかなり変わってて驚いた。オイオイコールとモッシュの応酬で要はキッズノリだったんだけどというか4年前のひたちなかですらあんなんじゃなかったぞ。あと最初2曲と最後だけってわかりやすすぎるだろ。笑。しかしながら最新アルバムの曲良かった。最近マンネリかなーと思ってたけど全然そんなことなかったわ。
あとこの日のベストアクト次点だったクラムボン。
フェスのクラムボンはどうしても物足りなさを感じることが多かったんだよね。シカゴやってサラウンドやってバイタルサインやったらもう3曲じゃない。はなればなれとかパン蜜、最近だとKANADEも結構やるじゃない、あと何を入れる余地あるんですかみたいな。しかしながら1曲目にナイトクルージングっていうのは完全に意表を突かれた。んでKANADEっていう流れはわりと世間一般の「ゆるポップ」的なクラムボンへのイメージを真逆の行く感じで意表を突いててすごく良かった。それこそ穏やかなポップスからアンビエントなポストロックまで幅広くこなせちゃうのがクラムボンであって、その幅広さを存分に見せつけてくれてる。そして今日初披露となった「LOVER ALBUM 2」からの「DESIRE 〜情熱〜」。まさかクラムボンが中森明菜のカバーをやるとは思っていなかったのでどんな物になるのか全く想像ついてなかった中での初披露。結果聴いてみればなるほどクラムボンでした。具体的には「Re-意味は無い」とか「Ka-Ka-KaLMa」とかみたいにベースとドラムが前面に出てくるタイプのアレンジ。ARABAKIの客層を考えても絶妙な選曲だったね。さらには最後には「あかり from HERE」を同じステージ一つ前のアクトだったTHA BLUE HERBと一緒にオリジナルバージョンでやってしまうのだからもう至れり尽くせり。アラバキならではのステージ、だったね。
●2日目のハイライトだった加山雄三とARABAKIのストーリー
ARABAKIに加山雄三が出ると発表されたのは開催の1ヶ月半前。バックバンドだけが先に発表されている状態で、そのバンドが 佐藤タイジ・ウエノコウジ・武藤昭平・名越由貴夫・山本健太・高野勲というメンバー。 YOUNG KING BANDとは言うけれど、全員僕より年上なのにヤングとかどういうことやねんと思ったのを覚えている。そんなわけで完全に記念で見とくかくらいでしかなかったんだけど、見てみたらものすごく良い方向に期待を裏切られた。
まず最初の5曲はエルビス・プレスリーのカバー。2曲目の「Blue Suade Shoes」で分かったし思い出した。加山雄三ってかつて和製エルビス・プレスリーっていわれてたこともあったロックンロール・ヒーローだったこともあったんだってことを。それゆえにバックバンド、特に武藤・ウエノのリズム隊の迫力が桁違いだったし、この選曲にものすごくマッチしていた。圧倒的。
そこで「今のはエルビスプレスリーのカバーなんだ。次は、おれの曲をやらせてもらうよ」っていって若大将オリジナル曲のスタート。2曲英詞のボーカル曲をやってから「CRAZY DRIVING」「ブラックサンドビーチ」のインストゥルメンタル・メドレー。これはもうね、実力派のバックバンドそろえただけあって演奏の凄みが半端なくて、特に佐藤タイジと若大将のギター合戦が熱気にあふれてた。若大将も演奏している間にどんどん若くなってるんじゃないかと錯覚するくらい。御年76歳ですよ!アラバキ出演者最高齢ですよ!去年出演したさとう宗幸よりも12歳上だからね!(書くために調べたら予想以上で驚いた)いやあ、めちゃくちゃかっこよかった。
そして終盤には「青い星くず」「夜空の星」といったヒットナンバーを連発して、超名曲「君といつまでも」。イントロが鳴り響いた瞬間に僕がいた最前エリアでどよめきと歓声が起こる。ああ、やっぱりこの曲みんな待ってたんだなあ。観客のテンションも最高潮の中、最初のサビでなぜかモンパチのキヨサクが登場!そのまま更に盛り上がり、超有名なセリフである「幸せだなぁ」のくだり派ももちろんやってくれましたよ。しかもアレンジして。「幸せだな~、こんなに素晴らしいオーディエンスに恵まれて、そしてこんなに素晴らしいミュージシャンにも恵まれて、こんなに素晴らしい場所でライブが出来るなんて、僕は幸せだなぁ」このセリフの時がおそらくこの日一番の盛り上がりを見せた瞬間だったのではないだろうか。泣きそうな程良かった。ここで大団円、と思いきやキヨサクイルし東北では桜の咲く季節だしということで、まさかのサライに突入。キヨサクが谷村新司の代わりということらしい。笑。最後はみんなで大合唱して終わり。なんと14曲。約50分。あまりにも、あまりにも濃厚な時間。間違いなくこのフェスにおけるベストアクトは加山雄三だ。僕が見た分に関してはそう言える。
しかしまあ、ここ数年でベテラン歌手のロックフェス進出が毎年ニュースになったりしてるけど、今回の加山雄三は相応のニュース性とそれに見合うだけのアクトの価値があった。そして、ニュース性はあったけれどもあくまでアラバキのストーリーの延長上の物として今回は位置付けることが出来る。つまりニュースではあるけど「事件」ではないという話。レジーさんのブログでロックフェスのストーリーとアイドルのストーリーの話していたけど、アラバキって国内大型ロックフェスの中では基本的に出演者の硬派度合(おっさん度合ともいう)が高いことと、温故知新というか昔の曲を演奏する企画を多数やることの二つが他のフェスと際立って違う特徴である。ここ4年の内3年は忌野清志郎トリビュートセッションが行われているし、THEATRE BLOOK主催のGTGGTR祭では古今東西のロックの名曲をカバーしているくらい。そして子供ばんどはアラバキで復活したし、当初はB.B.クイーンズもその予定だった(震災で日程が順延してしまったけど)。去年は怒髪天が日本の名曲を歌うというイベントで、さとう宗幸がゲスト出演して青葉城恋歌を歌い、地元民は大盛り上がりだった(これは仙台の人からしたら凄いことだと言われた。企画自体は微妙だったけどね…)。それゆえかは良くわからないけど、だから、既に半分スタンダードというか日本の名曲化している加山雄三が出るとしたら、アラバキがもっともふさわしかったんじゃないか。そして加山雄三という役者のために、とてもアラバキらしいバックバンドを用意したセンスは拍手だ。これもセッション・競演がやたら多いアラバキだからこそ自然だったわけだ。そもそもYOUNG KING BANDがボーカル抜きで先に発表されたときも、「ボーカル誰?」とかいう声は殆どといって良いほど聞こえなかったもんな。他のコラボ・セッション企画と同列な物なのかな、と思ってた。僕も。笑。
そして15年前に買った加山雄三トリビュートアルバムのことを思い出し、棚の奥底から引っ張り出してまた聴いてみた。当時聴いていた赤坂泰彦のミリオンナイツで激推しされてたので買ったんだよね。これを聴いていた高校時代の自分に教えてあげてあげたい。お前将来加山雄三生で見ることになるぞって。しかもステージ相当近くで(10分前くらいにステージ前に到着したら空いてたので最前エリア前から10番目くらいに陣取った。滅多に見られないのにもったいない!と思ったけどあとで写真とか見たら普通に客が入っていたようで良かった)って。このCDをかつて聴いていたおかげでライブをより楽しむことが出来て、改めて音楽って繋がってて面白いなあと思いましたとさ。
A Tribute To Kayama Yuzo 60 CANDLES
因みにこのアルバム、今みたいにレコード会社を越えたトリビュートアルバムが出るようになったさきがけのアルバムで、参加ミュージシャンも恐ろしいほど豪華だったりする。竹中直人と一緒に参加しているスカパラを代表してコメントしているのが青木さんだったり、色々感慨深い。
それと最後に。サライの演奏が終わったあとに若大将はステージを回ってYOUNG KING BANDのメンバー一人一人に握手をしていってた。手拍子が上手く合ってないとやり直しさせたりとかちょっと大物然とした態度があったりしてたけどすごい真摯にこのフェスに向き合い、そして歌い上げ楽しんだんだなあと思い、こちらも良い気持ちになった。若大将、最高でしたよ!
あと少しだけ。今年は震災の年ですらなかったチケットのソールドアウトが起き、どうなるのかなと思ったら想像以上の混雑具合で、結果的にハナレグミや岡村靖幸といったアクトは結果的に「捨てる」ことになった。道は常に混んでおり、食事やトイレにも毎度長蛇の列。ある程度はフェスにつきものだからしょうがないだろうなあと思いつつ、やはりその辺りはRIJFのような快適性重視のフェス以外の物と比較してもちょっと足りないなあ、という感じがした。SETSTOCKやap bankの休止など、中途半端なフェスの淘汰と大規模フェスへの集中が進んでいくことが予想される。となると、例年の「まあまあな集客」前提のインフラ設計はきっときついんだろうなあと思った。機材車のルートも含めて(このフェスはとにかく道が狭い!)、抜本的に考える時期に来ていると思う。しかしながらそれさえ克服すればもっと良いフェスになると思うし、なんだかんだで一番好きなフェスなので(それだけに最近最も推してるパスピエが出たことは本当に嬉しかった)今年も感謝だしこれからに期待。
By たにみやん • Music, フェス • • Tags: クラムボン, パスピエ, 加山雄三, 怒髪天