9月 15 2014
クラムボンとミュージシャンの繋がり、トリビュートアルバム
レギュラーメンバーとして参加させて貰ってるレジーさんのポータルでのプレイリストで、今年で結成20周年を迎えたクラムボンを題材としたプレイリストを組みました。同業のミュージシャンから支持があるミュージシャンズ・ミュージシャンであり、他のミュージシャンとも交流の多い彼等が築いた関係性をテーマにしています。今回はその話と冬にリリースされるトリビュートアルバムについて。
●プレイリスト解説
本当はTwitterでやろうかなあと思っていたんですが、書くことが予想以上に多かったのでここでやることに。笑
- さくら / グループ魂
一発目から意外な取り合わせだけど、映像内で語られているとおり原田郁子さんは子供の頃松戸市に住んでいて、その時に破壊(阿部サダヲ)と同じ小学校に通っていたということなのだ。因みに破壊さんと郁子さんは5歳差なので一応1年かぶっている。郁子さんは福岡出身のイメージが強かっただけにこれは驚きの事実だった。因みに福岡での高校時代の同級生にはナンバガ・ブッチャーズ・LAMAの田渕ひさ子さんがいたそうな。 - おだやかな暮らし / おおはた雄一
クラムボンがカバーアルバム第1弾「LOVER ALBUM」でカバーした楽曲。相当惚れ込んだのか、この時期に独立して事務所を構える際おはたさんも誘っている。 - Higher than the Sun / Cymbals
クラムボンと同じくデビュー時に「ポスト渋谷系」にカテゴライズされていた同世代バンドCymbals。沖井さんによると初めて対バンしたのはインディーズ2ndアルバムのレコ初ライブとのことで、相当初期から交流があったことになる。ミトさんはメンバー全員と仲良しのようだけど、沖井さんとは今でも濃い関係が続いてて、しょっちゅう飲みに行ってることが双方のTwitterで報告されている。 - 新利の風 / HUSKING BEE
12月に出るトリビュートアルバムの参加バンドで、クラムボンもまた彼等のトリビュートアルバムに「雲のいびき」で参加している(因みにこの曲自体がクラムボンをイメージして作ったものなんだとか)。昨年の「clammbon faVS!!!」にハスキンが参加している。磯部さんとミトさんが交友深いみたいね。 - 8.6 / toe + 土岐麻子
上記で挙げたHUSKING BEEのトリビュートアルバムに収録された大傑作。toeはクラムボンともっともなかの良いバンドの一つで、Gtの美濃さんがレコーディングエンジニアとして2009年の「Re-clammbon」以降の全ての作品(ベストアルバムを除く)を手がけている。また、郁子さんも何度かtoeのフィーチャリングボーカルとして参加。ライブでも幾度となく共演している。そして土岐麻子はCymbalsのボーカル。そう、この組み合わせを取り持ったのはミトさんなんです。この年のフジロックには土岐さん・ミトさんがtoeのゲストで出演。これで手応えを感じたtoeはアルバム「For Long Tomorrow」にて土岐さんを再度ボーカルに迎え、既に山嵜さんが歌唱していた「グッドバイ」再録版のボーカルを依頼。この曲は鉄板。 - Sun Shower / 木村カエラ
木村カエラとミトさんの付き合いはかなり長くて、2枚目のアルバム「Circle」の表題曲を担当してからは、全曲渡邉忍作曲だった「8EIGHT8」を除く全てのオリジナルアルバムに楽曲提供している。その中でもミトさんが特に思い入れのある1曲。 - U&I / 放課後ティータイム
ミトさんが重度のアニオタだということはもはやファンの間では常識になっているんだけど、特に入れ込んでいたのが「けいおん!」。そしてその入れ込み用から仕事が発生するというミラクル。主人公平沢唯役の豊崎愛生がクラムボン好きということで、シングル曲「Dill」をプロデュースすることに。その後も楽曲提供を続ける中、今度はクラムボンがカバーアルバム「LOVER ALBUM2」にてこの曲をカバーしちゃいましたとさ。 - Allegro Cantabile / SUEMITSU & THE SUEMITH
SUEMITSU & THE SUEMITHとは、木村カエラの「Butterfly」を作曲した末光篤のソロプロジェクトで、THE SUEMITHがサポートメンバーのことを指している。ミトさんはそこでベースを担当していた、と言うわけ。今でも末光篤ソロ名義のライブでたまに参加してたりします。 - 月の恋人 / Polaris
元フィッシュマンズの柏原謙がオオヤユウスケと結成したバンド。この曲ではコーラスで郁子さんが参加しているけど、他のメンバーもサポートとして何度も参加しており、非常に繋がりが深いバンド。ここでの共演が、その後フィッシュマンズの再始動に郁子さんがコミットしていくきっかけとなったとか。そしてオオヤユウスケは郁子さん、ハナレグミとユニット「ohana」を結成して活動。 - ただのともだち / salyu x salyu
clammbon faVS!!!の第1弾に参加したsalyu × salyu。福岡でクラムボンがライブをやっている日にsalyuが自ら自分のツアーの対バンを交渉するためだけに福岡を訪れた、というのが付き合いの始まり(その日アンコールで急遽salyuもステージに上がったそうな)。その後大いに意気投合したらしい。今年の7月にはsalyu、原田郁子に畠山美由紀を加えた3人でジョイントライブを日比谷野音で行った。言った方々によると超良かったらしい。 - オハナレゲエ / ハナレグミ(ohana)
郁子さんとの共演の機会が多く、とにかく仲が良いことで有名なハナレグミこと永積タカシ。先程触れた「ohana」の曲のうち、全編彼がメインボーカルを取っているこの曲は、その後の彼のソロライブでも定番の曲になっている。ネット上では既に結婚してるんだみたいな話も出てるけど実際どうなんだろうね。因みにクラムボンはSUPER BUTTER DOGの「外出中」を「LOVER ALBUM」でカバー済。あとレキシさんとも仲良しですね。 - Rollin’ Rollin’ / 七尾旅人
彼もまた最近郁子さんと共演の機会が多い。原曲はやけのはらとのコラボ。クラムボンは彼の「ぎやまん」を「LOVER ALBUM 2」にてカバーしているが、とにかくアバンギャルドというか、前衛的なアプローチのアレンジになっている。その辺の経緯はミトさん直々の解説を御参照ください。 - Reflection Eternal / clammbon with yamazaki, mino & yamane from toe
2010年に事故死したトラックメイカーNujabesの楽曲のカバー。元々彼がクラムボン曲をリミックスしてくれたところから縁が始まり家族ぐるみの付き合いをしていたそうな。その彼のトリビュートアルバムを作成するに辺り、同様に付き合いのあったtoeのメンバーを呼んでレコーディングした物がこれ。そしてこのレコーディングの詳細は、ミトさんがTwitterでお話してくれてます。
本当はLITTLE CREATURESとかも入れようとしたんだけど残念。因みに僕は数年前にこの辺のミュージシャン交流を軸に聴くものを増やしていた時期がありました。一つのミュージシャンを軸に興味を伸ばしていくのは、自分の好みに近いものにあたる可能性が高いので割とお勧めです。
●トリビュートアルバムについて感じたことと少し予想
さて、そのクラムボンですが、アニバーサリー企画として12月にトリビュートアルバムが出ることになりました。参加メンバーを見ると、かなり予想通りだなあという感じ。基本的に彼等と付き合いのあるミュージシャンが殆どであり、上記のプレイリスト同様彼等がこれまで音楽活動を通して築いてきた関係が垣間見える物になっている。意外に重なってないので、せっかくなのでこちらについても解説しておこう。
- Buffalo Daughter
2010年のneutralnationというライブイベントで共演してるのを見たけど、それ以外にもベースの大野さんはsalyu × salyuのサポートしてて、会う機会も多い。お互いオヤイデ電気ユーザーなのもあって話も弾んでると推察。 - downy
かなり古い時代からの付き合い。 - GREAT3
共演経験多数。この前のLIQUIDROOMアニバーサリーイベントでも対バンしてましたね。 - HUSKING BEE
プレイリスト参照。 - Mice Parade
唯一の海外組。「id」で一部楽曲のプロデュースを担当。クラムボンメンバーもマイスのアルバムにゲスト参加してる。 - NONA REEVES
ワーナーミュージックでの、同期のレーベルメイト。CDデビューの時期は微妙に違うんだけどね。(リンク先のツイートはキリンジの堀込泰行が脱退を発表した日のもの) - TOKYO No.1 SOUL SET
「LOVER ALBUM2」には、BIKKEを招いて「状態のハイウェイ」をカバーしたライブ音源が収録されている。 - 青葉市子
郁子さんと仲良しで、タム君ことウィスット・ポンニミットと3人で共演したり、市子さんのツアーグッズのイラストを郁子さんが手がけたりしている。あとは福岡のCircleってフェスでレキシのバックコーラス一緒にやったりとかしてたね(残り二人はハナレグミとSalyu)。 - ストレイテナー
ミトさんとホリエさんが仲良しみたい。たまにツイートに名前が出てくる。 - 蓮沼執太フィル
ライブで「ある鼓動」のカバーを演奏しているらしい。
というわけで見れば納得のメンバーなんだけど、上記のプレイリストで挙げた人たちがあまり入ってないのでそこから数組くるかな、というところと、あとは期待したい人達をいくつか。
ハナレグミ・レキシ辺りのバタードッグ界隈やtoeは出てほしくはあるけど、敢えて出ないのかも。後輩バンドとしては今年2回ほど対バンしたパスピエやこの前「君は僕のもの」のカバーをシングルのカップリングに出したNICO touch the wallとか。出てくるか。パスピエは出てくれ。あと花澤さんや豊崎さん辺りが出てきたら面白いだろうな。
クラムボン自体の音楽的な変遷は前に書いたとおりなんだけど、そのことが様々なミュージシャンとの関係を作るだけでなく彼等の音楽へのフィードバックになっているような印象を受ける。カバーアルバムで積極的に同時代のミュージシャンを取り上げたりしてるくらいだし。現在彼等は来年リリース予定の5年ぶりのオリジナルアルバムを制作中なんだけど、今回のトリビュートアルバムを踏まえた物になるんじゃないかな。ということでどちらの作品も首を長くして待っております。
11月 16 2015
「30代の僕達が2015年に聴く音楽」についてずっと考えてるという話
このブログでは定期的に日本人の音楽受容みたいな話を書いているけど、日本では30代になると音楽を熱心に聞いたり追っかけたりしなくなる、というデータがある。例えば下記のエントリ。
博報堂「生活定点調査」データに見える日本人と音楽の関わり
理由は割と想像がつくところで、仕事での昇進あるいは転職・結婚・育児などライフスタイルが大きく変わる出来事がある、という話が大半だろう。ではあるんだけど、もう一つ大事な話として「30代に合った音楽が無い・もしくはアクセスしづらい」みたいな話もあるんじゃないかな、というのも日々感じている。ポピュラーミュージックは若者向け、みたいな話は聞かれて久しい(もちろんヒットする物には幅広い層にリーチする魅力がある)けど、こうも嗜好の細分化・クラスタ化が進んだ現代ではそれぞれの年代にリーチする音楽というのをもう少し考えてみてもいいんじゃないかな、と言うことをここ数年ずっと考えていた。そんなわけで、いくつか最近自分で見聞きした物をピックアップしつつ色々考えてみたい。
●ズバリ「30代」を描いたPOLTAとONIGAWARA
そもそも歌詞にその楽曲の主人公の具体的なパーソナリティを入れることってどちらかというと少ない。なんでかというと、その付加した属性に当てはまらないリスナーに共感されづらくなるからだと考えられる。なんだけど、裏を返すと「ターゲットを絞り込んで強く共感させる」という手法に用いられることもあるわけ。そんなところで最近「30代独身」みたいな要素を思いっきり歌詞に盛り込んできた物をいくつか立て続けに聴いて「これも一種の時代の流れなのかな…?」なんて思ったりした。
1つめはPOLTAの「SAD COMMUNICATION」。noteにクソ長いレビューを書いたのだけど「みそじれーしょん」の「あたし このまま死ぬのやだな」は超刺さった。「それでも前を向く」も含めて共感ポイント多数なんだけど、聴きすぎるとちょっと辛くなる(苦笑)。しかしながら「30」も含め、書いている歌詞世界はかなり真に迫るものがあるなあと思ったり。
2つ目はONIGAWARAの「エビバディOK?」の「ONIGAWARA SUPER STAR」では「不謹慎とかじゃなく男子30にして嫁をめとらぬ者は人間失格 じゃあ僕はもうリタイアします音楽と一緒に心中します とか言ってみたいけど言うわけない 早く人間になりたーい」なんて30代独身男性視点の歌詞が出てきたりする。。銀杏BOYZとかサンボマスターとかが10年前くらいにやってたやってたリビドー全開のロックより若干思春期抜けた感じに仕上がってる。年末にもモテたい男子の妄想ソングをリリースとのことで、確かにそっちの方が今っぽい感じだ。
とはいえ、ここまで書いた結果こういった歌は「ライフステージが変わってない人」のための歌なんじゃないかと気がしてきた。じゃあそういう人も含めてどんなのがフィットする広い意味での「30代にマッチする音楽」かな、みたいなのが次のお題。
●グッドポッポスみたいな話、それから歌は世につれみたいな話
最近思うのはじっくり聞かせてくれるようなポップスがより心地よくなっている、ということ。この辺は好みとしか言いようがないんだけど、自分としてはいわゆるギターロック的なものから年をおうごとに離れている自覚はある。エアジャムも98世代もメロコアもリアルタイムで一切通らなかったという人間なのでそうなのかもしれないけど、それ以上に自分の年齢にマッチしてきているんじゃないか、という感触がある。
その代表的なのは先日あったクラムボンの日本武道館ライブ。クラムボンはここ5・6年くらい見てて、3人だけで織り成す強靭なアンサンブルに常に圧倒されてきていたんだけど、それが日本武道館というスケールでも普通に機能してることに驚いた。両国国技館でやった時よりもはるかに響きも良かったように感じるんだけど、機材のアップグレードによるものだけでもないだろう。また、アンサンブルという観点からは先月見に行った吉田ヨウヘイgroupのワンマンライブも相当に良く、こう行った「音を聴かせる」ことと「グルーヴ感」を両立したポップスなんかは正直に言ってもっと僕ら世代の人間に聴いてほしいと思う。クラムボンがイオンモールツアーをやった理由には「子育て世代に入った自分たちのかつてのファンに見てほしいから」というのがあったけど、確かにこういう音楽をカジュアルに聴く機会があったらなあという感じはある。吉田ヨウヘイgroupのライブを見終わった後にはほんとそう思った。あと「ホールで見たい」というのも。
もう一つ、そういった聴かせるポップス方面として良かったなあと思うのは先月行われたTWEEDEESとROUND TABLEの対バン。ROUND TABLEは花澤香菜のバックバンドとしてもやっているメンツが半分以上で、心地よくかつ軽やかな音が印象的だった。そして何よりもゲストコーラスの藤村鼓乃美(ワンリルキス)のソロ楽曲「SUMMER VACATION(北川さんプロデュース)」がめちゃくちゃ良かった(CD再販してください…配信でもいいんで)。
それを受けてのTWEEDEESも、6月のワンマンライブからかなり場数を踏んでいたためかバンドとしての一体感も出てるし各曲における歌い方や見せ方が「バンド然としてきた」印象を受けた。沖井礼二feat.清浦夏実状態だったデビュー当初からするとバンドとして成立してきているなあと。その実感が出てきていることが清浦さんの次の台詞からもうかがえる。
Cymbalsの「怒れる小さな茶色い犬」を披露した後の盛り上がりを受けての物だったけど、率直に言って僕はこの言葉を聞けて、ポスト渋谷系チルドレン(というかCymbalsチルドレン)としてすごく嬉しかった。Cymbalsの再現みたいな物を求めるんじゃなくて、現在進行形のバンドとして進んでいくんだ、という決意が聞けたことが本当に嬉しかった。
特にここ数年は90年代のヒット曲を中心にカバー曲やリバイバルが大盛り上がりで、「もう新曲いらない」みたいな気持ちの人も多いかもしれない。でもやっぱり「歌は世につれ世は歌につれ」という「音楽と時代・思い出の結びつき」みたいな物は、空気感薄くなったとはいえ絶対にあると思うわけ(前節で挙げた「30代独身」の歌なんかもそう)。懐メロ商売自体は大して否定しないけど、それ自体が過去にばっか目が向いているよねえということが、僕にとってこの手の物にあまり手を出したくならない理由。だから、過去に頼らない自分たちの歌をきちんと作って聴かれていくぞ、というその意思表明については本当に拍手したい。
特にこのグループにはCymbalsファンと清浦夏実ファンという二つのクラスタがあって、それぞれが(僕も含め)かなり過去にとらわれている印象があったので、その辺について思うところはあったんだろうなあとも思うわけ。ここからに本当に期待したい。Cymbalsのアナログ再発、結局注文しちゃったけどそれはそこから沖井さん達が活動続ける原資になればなあという気持ちもあってであり、やっぱもっとこの先の展開を見たい。まずはCymbalsや清浦ソロの曲やらなくてもいいくらいにレパートリーがほしいよね。笑
そんな感じで、自分の好みに自覚的になりながら、そこにマッチする音楽を引き続き探していこうかな、と思う次第。いいのがあったらもちろんここなどでピックアップする予定。近日1本紹介する予定(最近遅筆だけど割とすぐやる予定!)
By たにみやん • Music • • Tags: ONIGAWARA, POLTA, TWEEDEES, クラムボン, 吉田ヨウヘイgroup