2014年の音楽配信の売上読み解き


先月CDなどのパッケージメディアの売り上げというか生産状況について色々考察など入れてみたけど、音楽配信の方も年間のデータが出たのでざーっとレビューしていこう。日本レコード協会の有料音楽配信売上実績というデータで、こちらは配信業者からの売り上げデータ提出による物なので生産じゃなくて売上なんですね(そもそも複製コストゼロの配信で「生産」を数えることには意味がないしね)。

この集計の概要ははっきり明記しているわけではないけど、日本レコード協会が正規音源を扱っていると認定している証である「エルマーク」を付与されている音楽配信サイトが対象になっている物と推測される。iTunes StoreやAmazon MP3にももちろんついているし、リスト(PDFです)を見るに各アーティスト・レコード会社等の直販サイトも対象になっているようです。

基本的な問題認識などに関しては去年の売上考察文章を読んで頂けると幸いです(前触れたことはあまり書いてないので)。

●サマリー:ついに底打ち?

まずは売上数量。

volume

PC/スマホシングル:1億903万5千DL(前年比119%)
PC/スマホアルバム:772万DL(前年比117%)
着うた+着うたフル:2,426万5千DL(前年比48%)
メロディコール:5,303万5千件(前年比83%)
DL数総計:1億9,653万9千件(前年比91%、ビデオ等その他項目含んだ数値)

基本的に着うた+着うたフルが大変な勢いで減っているので分量としてはトータルで落ち込んでいるというのがここ数年の流れ。確かに「音楽配信全体としては減少」なんだけど、着うた+着うたフルは毎年半減以下、という状況なので、このままのペースで行けば、来年辺りで底を打つんじゃないかな、という感じである。ただ、これまで前年比130~140%くらいであったスマートフォン向けダウンロードの数値の伸びが若干鈍化していて(去年「サブスクリプションの浸透による旧曲DLの減少」と推察した)、若干潮目が変わってきているような感じもするところで、来年以降の状況は不透明。

そして売上金額。

sales

PC/スマホシングル:174億8,700万円(前年比118%)
PC/スマホアルバム:83億5,200万円(前年比121%)
着うた+着うたフル:42億1,300万円(前年比43%)
メロディーコール:37億5,300万円(前年比77%)
ダウンロード総計:345億1,400万円(前年比92%)
サブスクリプション:78億4,700万円(前年比288%)
音楽配信売上総計:436億9,900万円(前年比105%)

着うたフルもPC/スマホダウンロードも単価は一緒なので、ダウンロード型音楽配信だけだと数量同様で前年度比90%くらい。しかし、サブスクリプションの大幅伸張によりトータルでは前年度比100%ちょっとくらい、というところに落ち着いている。それにしてもガラケー向けは随分存在感がなくなったもんだ……メロディーコールは意外になくなってないけど(大半は解約忘れだろう)。

因みにどんな曲が売れたのか。これは定量数値はないんだけど、日本レコード協会が一定ダウンロード数に達した楽曲に「ゴールド」「プラチナ」等の認定をしている(いわゆるゴールドディスクとかと同じ原理だね)。これを元に、ある程度推測することは可能だ(去年の文章からのコピペ)。因みに2014年にリリースされた楽曲でプラチナ以上のランクに認定されたのは以下の楽曲。

ミリオン

  • 松たか子「レット・イット・ゴー~ありのままで~(日本語歌) 」

プラチナ(25万DL~)

  • 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」
  • SEKAI NO OWARI「Dragon Night」
  • シェネル「Happiness」
  • 秦基博「ひまわりの約束」
  • 絢香「にじいろ」
  • 西野カナ「darling」
  • 神田沙也加、松たか子「生まれてはじめて(日本語歌)」
  • 氣志團「喧嘩上等」
  • 安室奈美恵「TSUKI」
  • Rihwa「春風」
  • May.J「Let It Go~ありのままで~(エンドソング)」
  • Pharrell Williams「HAPPY」
  • Idina Menzel「Let It Go」

このほか、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」は1月度の認定で50万DLに達した翌月に75万DLを達成している。ともあれ、なんだかんだで比較的納得感ある顔ぶれに加えてDLだと強いんだなと感じられるミュージシャンもいるところ。結構面白い。そして「アナと雪の女王」の圧倒的な存在感…!

そんな感じでひとまず売上金額だけは久しぶりに前年度越えした日本の音楽配信市場だけど、そうそう順風満帆というわけでもない感じ。ここからはその辺を見つつ、展望のような物を述べていきたい。

●定額制サブスクリプションの危機、LINE MUSICに期待(2年連続2度目)

今年になってから出てきた音楽配信関連のニュースとしてあげられるのは、ソニーのMusic Unlimitedがサービス終了を発表したこと。2500万曲のカタログをもつ、日本国内で展開されているサービスでは最大規模の物だったので、おそらく国内での会員数もそれなりにいたはず。それがごっそりなくなってしまう(他国ではPlaystasion MusicというSpotifyによるOEMのようなサービスが立ち上がるが、日本では当面展開されないので受け皿はない)のは、業界としても大きい。KKBOXやレコチョクBestにユーザーが移るかというと、必ずしも全部移るわけではないだろうと想像される(曲数の違いもあるし)。

それにしても去年来ると言われてたSpotifyについては今年も来る気配がない。おそらくフリーミアムモデルへの抵抗が強いからだろうが、これはしょうがないだろう。だって事業予測立てづらいもん。どれだけの人がフリーという導線から音楽にお金払ってくれるのかということを考えると、難しいなあと思ってしまうのだろう。日本にはレンタルCDもあるし、何もかもアメリカと同じように行くわけじゃないしね。てな訳で今の状況は、「このままじゃじり貧なのは分かってるんだろうけど一気に収益を落とす判断に踏み切れない」という典型的なイノベーションのジレンマではある。ただ、破壊的イノベーションで成功する保証もない。

というわけでMusic Unlimited無くなってどうなるのという答えは、おそらくSMEも出資しているLINE MUSICなのだろう。一応これもサブスクリプション型のサービスになると言うことをアナウンスしている。去年も「LINE MUSICに期待」と書いたが、残念ながら今年も「LINE MUSICに期待」と書かざるを得ない。というかMusic Unlimitedが終了するまでにこれがこないと定額制サブスクリプションのユーザーが吹っ飛んで来年はまたしてもマイナスに転じる可能性が強い。まあどっちにせよSpotifyが来たら一気にマイナスに転じることになりそうな気がするけど。

●これからの音楽鑑賞の話をしよう

そんな中、最近電子書籍で下記の本を読んだ。

 

この「未来は音楽が連れてくる」という本は、Musician-NETで連載されている同名のコラムをトピック毎にまとめて書籍化した物だ(因みに全6巻の予定で作られており、現在は2巻までがKindleで刊行されている)。連載の順番(Spotifyから始まる)ではなくて、時代別に再編されているので、まずはアメリカにおける近代音楽産業の幕開け、すなわちエジソンによる蓄音機の発明から始まる。そこからレコード産業は成長してきたがラジオという「無料で音楽が聴ける存在」の登場により壊滅に追いやられた。そこから技術革新でレコードはラジオ以上の高音質を確保しただけでなく、価格破壊・映画との結びつき・ダンスホールなどの新しい楽しみ方など数々のイノベーションで再び音楽メディアの中心に返り咲く。このレコードとラジオの関係は今のCD(ある種配信も含む音楽を「買う」行為)とYouTubeの関係を彷彿とさせる。そしてSpotifyだったりハイレゾだったりという新しいソリューションが出ているのだろうけど、ある程度の必要十分な音質と利便性が揃ってしまっている今は状況が異なる。テイラー・スウィフトはSpotifyに「NO」を突き付け最新アルバム「1989」を大ヒットさせた。もちろん彼女くらいの人気あってこそできる話なのだろうけど。

今向かってる方か、テイラーやトム・ヨークの主張か、どれが正解かというのはまだわからないけど、基本的に音楽にアクセスする環境がたくさんあるということは良いことだとは思う。僕個人としてはこれからも楽しませてもらってるお礼(と言う名の消費)をしながら音楽を楽しんでいきたい。というわけで今回はこんなところで。