2013年の音楽パッケージメディア(CD・映像・アナログ等)売上まとめ


先月にちょっと先出ししたけど、日本レコード協会さんからの今月度の各種統計発表により、データが発表されて通年のが揃ったので、去年の音楽パッケージメディアの諸売上について一通りまとめようと思います。本来は配信も一緒にやりたかったのだけどそちらは公開タイミングが1ヶ月後の2月下旬ということなので、まずはパッケージ物から(昨年末にちょっと間違って言っちゃったので期待してた方すみません)。これまでは毎年4月にまとめて記事を書いてますが、今回は直データを触っているので月別の詳細な分析が入ってる代わりに、レンタルや国際比較関係のグラフが省略されています。省略した分の話は別途公表された時にということで。

因みに、これまでの記事はこんな感じ。

2011年:音楽業界はどうヤバくてどうヤバくないかの話
2012年:レコード業界のゆくえ2013(音楽業界はどうヤバくてどうヤバくないかの話 Part.2)

●サマリー

ではCDと映像メディアについて、まず数量ベースで暦年単位での推移を比較。

Sales_Volume

CDシングル:6,060万枚(前年比93%)
CDアルバム:12,813万枚(前年比85%)
CD合計:18,874万枚(前年比88%)
音楽DVD/Blu-ray:5,686万枚(前年比78%)

シングルCDが4年ぶりの前年比減少。また、去年盛り返したアルバムも減少し2011年以下に。音楽DVD/Blu-rayは2011年水準まで減少。その辺どうしてそうなってるのかはこれから細かく見て行きます。

続いて同様に金額ベースのグラフ。

Sales_Value

CDシングル:429億円(前年比97%)
CDアルバム:1,532億円(前年比85%)
CD合計:1,961億円(前年比87%)
音楽DVD/Blu-ray:720億円(前年比85%)

ここで強調しておきたいのは、どうしてもニュースや各種音楽番組で伝えられるのはシングルチャートの話題が多いから勘違いしやすいけど日本のCD市場のメインプレイヤーはあくまでアルバムであるということ。(これは日本だけではない全世界的な傾向。日本はシングル比率が高い方ではあるけど)。なので、色々売り方を工夫してシングルの売上げを盛り返したりしてもアルバムの売上げ一つでひっくり返ったりしちゃう。実際に去年久しぶりにCD全体の売上が上がったのはミスチルの2枚組アルバムと大御所のベストアルバムが多数ヒットしたことでアルバムの売上げが久しぶりに前年度比増となったことによるもので、その反動が今年ダイレクトに出ているよ、ということでもう少し詳しく見てみることに。

●CD売上の前年比較詳細

さて、次はCDシングル、CDアルバムの売上金額を月別に前年との比較をすることで要因分析。まずはシングル。

2012-13SG_01

シングルは半分以上の月の売上が前年を下回っており、その多くの月で前年からの落ち込みが大きい。前も言った通り2013年5月はAKB48の「さよならクロール」がグループ最高売上になったことによる押し上げだけど、その分は他の月でかき消された構図になっている。

次はアルバム。

2012-13AL_01

アルバムは前年のようなヒット作がなく、全般的に落ち込んだ構図に。3月には解散したファンモンの他、キスマイ、ワンオク、サカナクションなど20万枚クラスのヒット作が多数、6月にはB’zのベストアルバム2タイトル同時発売によるもの。因みに突出してる2012年11月はユーミンのベストアルバム効果という話は以前のエントリで詳述したのでそちらをご覧ください。

というわけでそれに関連して、去年に引き続いてオリコントップ100をジャンル別に分類してどんな物がウケてどんな物がウケなかったのか傾向をつかんでみることに。トップ100を抽出するとシングルについては約40%、アルバムについては約15%なのでサンプリングという扱いで考えて頂きたいところ。また、集計期間が3週間ほど前にずれていることにも注意してほしい(それによる結構重大なデータのズレもあるので)。

前年通り、定義はこんな感じ(ぶっちゃけ去年のコピペに一部修正加えただけw)。

  • ポップス:ものすごく範囲が広くて安室浜崎EXILEからGReeeeNとか加藤ミリヤとか、さらにいきものがかりまで。事実上その他みたいな感じにもなってしまってるかも。でもまあそれが日本のいいところじゃないですかね。
  • ロック:主にバンド形態のミスチル・BUMP OF CHIKEN・RADWIMPS・サカナクションとバンド形態ではないB’zやSuperfly・miwaまで含んでる。サウンド面とあとはロックフェスに出てるかどうか位で分類しているのでポップスとの境界については若干曖昧。
  • アイドル:まあ言わずもがなというか。当然ながらPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅもここ。
  • 大御所:その道25年以上のベテランさんたち。
  • 洋楽:日本と韓国以外の国のミュージシャンたち。
  • K-POP:いわなくてもわかると思うけど韓国のミュージシャンたち。数が多いので独立させた。
  • その他:今回多いからどんなのが入ったか書いておこう。声優(つーか水樹さん)とボカロ系(数個しかなかったからここに入れざるを得なかった)、演歌、サウンドトラック・クラシックなど。

ではどうぞ。

compare

シングルはアイドルとロックが減少してポップスが伸張…?と思う所なんだけどこれには裏があって、実はアイドルの減少はAKB48のシングルの発売時期のズレによる物。オリコン年間トップ100の集計期間は2012年の12月第2週付けから2013年の12月第1週付けのチャート。んで、AKB48の去年のじゃんけん大会シングル「永遠プレッシャー」は12月5日(第1週)発売なのに対し「鈴懸の木の道で(以下省略)」は12月11日発売(第2週)のため年間チャートに載らなかった。ただそれだけ。なので現状維持と考えてくださいな。んで問題はロックの減少とポップスの伸張。ロックは、単純にセルパワーのあるB’zやバンプがシングルを出さなかったからということもそうなんだけど、アルバムで15万枚を超えているサカナクションやONE OK ROCK等のシングルも100位圏外になっていて、軸足をアルバムに完全に移しているのでは?という印象を受けた(10万枚超えはゴールデンボンバーとSEKAI NO OWARIの2組だけ。)。また、ポップスについてはEXILEファミリーの怒濤の攻勢。E-girlsも含めるとタイトルは2012年の8個から14個に増えていて、その中でもダントツの売上になった「EXILE PRIDE~こんな世界を愛するため~」はライブチケットとのセット販売で断続的に売上をあげたため。シングルCDは単価が比較的低いからそういう付加価値を付けて複数枚販売をする余地があるということ、それからさっき言ったとおり報道などが比較的シングルに寄っていることが挙げられるんじゃないかな、と。何度も言ってるけどこの辺はさやわかさんの「AKB商法とは何だったのか」に詳しいです。おそらく2013年に出た日本の音楽関連の本では円藤都司昭さんの「ソーシャル化する音楽」と並ぶ、時代を切り取った重要な本だと思います。


AKB商法とは何だったのか

一方、アルバムについては2012年にキラーコンテンツを「出し切った」感があり、どのジャンルも枚数を減らしている。その中で注目するのはあまり枚数を減らしていないロック・洋楽と、伸張しているその他。ロックについてはB’zやBUMP OF CHICKEN、Superfly等のベスト盤に加えて、マキシマム ザ ホルモン・ONE OK ROCK、サカナクションの3組がオリジナルアルバムで15万枚超の売上を挙げるなど、去年ミスチルだけで280万枚挙げてたことによる反動がおさえられている。ただやはり売れているものの大半はベストアルバムなのが悩ましい。特筆するべきはその他。サウンドトラックはあまちゃんよりもガリレオとレ・ミゼラブルの方が売れてます。意外なことですが。それから「佐村河内守 作曲:交響曲第1番≪HIROSHIMA≫」など、テレビで取り上げられて火が付いた作品もあり、さっきのサントラとかとあいまって、テレビのコンテンツ力というのはまだ少し残っているのかな、というのを2012年には感じなかったけど2013年には感じた。あと、全体の落ち込みより軽微な減少で済んだ洋楽で去年1番売れたのはワン・ダイレクションです(TOP100に3作。内2枚は2012年の作品がロングヒットする形)。去年Mステにも何度か出てるからわかってる人も多いと思うけど、ホントきてますよね彼等。

●日本ではまだ嗜好品、アナログディスク

それからアナログディスクの話をしておきたかったんだ。アナログにインタビューなんかで言及するミュージシャンがぽつぽついたりで、そこそこ話題になってて、世界的にも「アナログディスクの復権日本語訳)」というのは一つのキーワードみたいだ。んでもって、日本でもそれは例外ではないんだってさ……で、その微妙に他人事みたいな言い方は何なんだという話なので、まず数量のグラフと金額のグラフを見よう。

Analog

2012年に特に洋楽がめっちゃ伸長してるじゃないか!いやしかし、この伸張、実はビートルズのリマスター版アナログレコードが出たからで、その反動で2013年は大幅に落ち込んでいる。邦楽アナログディスクも去年はきゃりーぱみゅぱみゅのアナログ版が売れたりしたのの反動で数は落としてるんだけど単価の高いアルバムにシフトしたのか金額については前年度比で伸びている。なんだけど、2013年のアナログディスク売上枚数は26万8千枚であり、カセットテープ(主に演歌。意外にバカにならない数だ!)の138万6千枚よりぐっと少ない。そして全体に占める割合は0.2%であり、前掲の記事におけるアメリカの2%とは桁が一つ違う。日本ではアナログ復権というまでにはまだ至ってないな、というのが数字から見た実態。ただ、一応2012年は異常値としても上昇トレンドは一応継続してる感あるし、また、10年前より少ない売上高なのに言及が増えているような気がするのはなぜなのか、というのは考える価値はありそう。とりあえずそれはまたの機会に。

●映像メディアは過渡期!?

映像メディア、つまりDVD/Blu-rayも月ごとの推移があるのでCDと同じようにグラフ化してみた(上の全体サマリーのグラフで分けてないのは、一昨年までBlu-rayはその他扱いなので時系列比較できなかったから)。

2012-13DB_01

ここからはっきりわかるのはDVDからBlu-rayへのシフトが進んでいるということ。しかし、特に5・8・11月をはじめとしてDVDがとても売れてない月も多く、結果として映像メディア自体としてはトータルでこれまた久しぶりに前年比割れに至ったという次第。まあ過渡期みたいな感じがあるんじゃないかな。いくつかのミュージシャンで過去のDVD作品をBlu-rayでリイシューすることも結構あり、買い控えみたいなところもあるんじゃないかと推測されるところ。そうなると、ダントツの年間トップ1・2である嵐を擁するジャニーズ事務所の所属グループの動向が気になるところ。なにせその嵐も含めた彼等の半分くらいのグループは、未だにDVDでしか作品をリリースしていないのだ。多分そこにはファンがどういう層か、という計算もあるのではないかとは考えられる(ただKinKi KidsはBlu-ray化されててSMAPはまだ、とかいろいろ基準がわからんです)。

CDと同じように映像データで配信だけっていうのはどうなの?というのもあるのだけど、まずフルムービーの取扱本数が少ないのでまだそんな段階ではないのでは、と(映像配信についても2月に併せてやりたいけど、第三四半期までの結果を見る限りでは前年度比横ばいなので、こちらへのシフトは進んでないのではないかと推測される。まあ言うほどデータ無いからたいして話すこと無さそうけど)。

●パッケージメディアのこの先

全般的に見ると数は減少ということで、CDを買うということ自体、趣味として能動的に音楽を楽しむということ自体が1990年代と比べれば「好きな人の趣味」になっているのは否めないところではあり、今年は今まで工夫を凝らして売ッたりすることでも止血できなくなってる感じ。ただいつも言ってる話だけど、他の国に比べればずっとパッケージメディアへの信頼性が高いお国柄だっていうのに、その優位性にあぐらをかいて「音楽を聴くこと」自体をマーケティングしてこなかったレコード会社の責任は重いんじゃないかと思うわけですよ。「音楽を聴くこと」が他の物とのお金取り合戦に惨敗している現状も配信への移行が遅れていることもその帰結だよなあ、と。

 

というわけで、お約束なんでこれ置いておきますね。

アイドルばかり聴かないで / Negicco

まあそれは若干冗談交じりのお約束として、こうなるといつも出てくるのは「今時パッケージメディアなんてオワコンでとうに配信の時代だろJK」みたいな言説。ここについては、個人ベースで見るとDL配信の方が買うのや持ち運び楽だったりするのに対して、一人1ID原則だったりすると家族間でのID統合・棲み分けとか難しいものもあるよねとか、まだまだ一長一短なところも若干あると思うわけ。それに、日本における音楽配信ってのはこの前見たとおり2012年の数字までで比較した限りでは単曲での数量がようやくCDシングルを越えたところで、アルバムは全くその域ではない。もちろんそっち側の方向に行こう指せてくことが中長期的には大事になってくるんだと思うけど。さて、配信周りの状況は今年変わったのか。今後の展望は(早くここの話をしたい!)、というところで配信についてはまた来月のお楽しみに。

それまでは間があるので、全く関係なく、自分の大好きなとある物についての深掘り記事をやりますよ、という次回予告。こちらもお楽しみに。