1月 24 2016
2015年の音楽パッケージメディア(CD・レコードなど)の市場読み解き
例年通り、2015年の音楽パッケージメディア情勢についてレコード協会さんの生産実績統計が発表になったのでそこに対する分析など書いていきたい。生データはこちら。
一般社団法人 日本レコード協会|各種統計
去年この協会のWebサイトがリニューアルしたのだが、はっきり言ってUI的には改悪そのものである。標準の文字の大きさでアクセスすると、表のセルの中で多桁数字に対する改行が入っており、数がわかりづらい。バカじゃないのか。しかもWindowsで文字を小さくすると1行に収まるがMacでは収まらない(Safari・Chrome・Firefoxどれでもだ)。担当者の方には即刻修正してほしい。ていうかこのデータ見てほしくないのか???
さて、例により前口上。ぶっちゃけた話、この記事には景気のいい話は余り出てこない。だからといってそれを煽るためにこの記事を書いているわけでは無いし、「今の音楽がダメだからCDが売れない」みたいなくだらない結論を書くつもりも無い。この売上集計を元にした記事は今回で5回目になるけど、正しい情報を書いてその背景に何が起きてるかを客観的に分析するだけだ。なぜ僕がやるのかというと誰もやってないからだし、自分自身にとってこの深掘する作業が面白くて楽しいからだ。そして原典のデータが見づらいから、という新しい理由も加わった(笑)。というわけでよろしく。
因みに、上記で参照しているのは生産実績統計なので、小売りで売れた分とは若干一致しないところがあります。後でちょっと触れるけど今年は12月の生産が多い分野もあり、元日発売日製品は12月のうちに作って出荷(さらにはフラゲもあるけど)するため年内の実績になる、みたいなことも発生する。
因みに過去の記事はこちら。
2011年:音楽業界はどうヤバくてどうヤバくないかの話
2012年:レコード業界のゆくえ2013(音楽業界はどうヤバくてどうヤバくないかの話 Part.2)
2013年:2013年の音楽パッケージメディア(CD・映像・アナログ等)売上まとめ
2014年:2014年の音楽パッケージメディア(CD・レコードなど)の売上読み解き
毎年タイトルをマイナーアップデートしてるんだなwそして今年も……
●サマリー
ではCDと映像メディアについて、まず数量ベースで暦年単位での推移を比較。
CDシングル:5,514万枚(前年比99%)
CDアルバム:11,269万枚(前年比98%)
CD合計:16,783万枚(前年比99%)
音楽DVD/Blu-ray:5,407万枚(前年比101%)
毎年同じ話をするけど、日本だけでなく全世界では音楽パッケージメディアとしての主流はシングルではなくアルバムなんです。金額だけでなく枚数もアルバムの方が上回っている、という話です。ただし、それでも日本は世界的に見てシングル比率が高いというところはあります(昔国際比較の記事載せましたが、基本的には変わってないはずです)。
CDシングル:417億円(前年比100%)
CDアルバム:1,384億円(前年比97%)
CD合計:1,801億円(前年比98%)
音楽DVD/Blu-ray:719億円(前年比106%)
枚数と同じで微減、といった感じ。今年の日本の音楽ビジネスにおけるトピックはApple Music、Google Play Music、LINE MUSIC、AWAといった定額制音楽配信が始まったことであり、それにより音楽の聴取形態が大きく変わることは間違いないのだけど、これでCDはますます売れなくなるとも、ひとまず定額制のストリーミングからパッケージ販売への導線が作られるとか両方の説があった。それで結果はどうなったかというとCDの販売数量及び金額は増えも減りもしてもいない。まあたかだか1年でドラスティックに変わるわけでもないし、定額制音楽配信自体日本で本格的に出てきたのは今年後半で浸透度はまだまだ低いので、こ年の数値が底打ちなのか足踏みなのかを含め、色々結果が出てくるのはこれからだろう(これら含む配信の話はまた来月に)。ただ、僕個人の話をすればCDを買う枚数が去年の後半から確実に減ったのは間違いない。
因みに、ここで挙げられている数値は日本レコード協会の集計数値であり、その加盟社が対象となるのでいわゆる「メジャーレーベル」の数値に限られたものになる(日本におけるメジャーレーベルの定義は日本レコード協会加盟社であること、です。詳しくは山口一郎さんによるラジオでの解説を参照あれ)。とはいえ、インディーズレーベルも生産や流通の一部をメジャーレーベルたるレコード会社に委託しているケースは極めて多いので「ほぼ」市場規模の数値、といってもそんなに問題ないんじゃないかと思う。
●CD売上の前年比較詳細
年間を通じたパッケージメディアの売上には殆ど去年と同じということになったために、去年以上に書くことがない。因みに洋邦別に前年比を出すと邦楽が104%、洋楽が73%くらい。その結果、パッケージメディアにおける洋楽比率は過去最低の14%にまで落ち込んだ。去年がアナ雪特需で一時的に盛り返していたとはいえ、ちょっとびっくりな数字ではある。では実際傾向どうだったのかということで、例によりオリコントップ100の属性比較。集計期間が1ヶ月ズレており、さらにシングルは4割くらいカバーできるけどアルバムは15%程度だから参考程度にしかならないことをご承知置きくださいませ。それからジャンル分けだけど、例年通りポップスとロックの境界線が曖昧な気がするけどそこはまあ気にすんな。
やっぱり洋楽の数値は少なくなっていた。心配だ。あと、ジャニーズと48G以外のアイドルによるアルバムは一切トップ100にランクインしなかった。ただし、今年はPerfumeももクロBABYMETALの三者が春にアルバムを出すことが発表されているので一時的なものでしょう。でんぱ組.inc等もランクインしなかったことは意外だけど、よくよく考えるとこの辺りも上記3グループと異なりCD売上が接触頼みな面があるなので、単価の高いアルバムはなかなか売りづらいんだろうなあと思わされるところ。シングルのアニメ・声優については「ラブライブ!(サンシャイン含む)」「THE IDOL M@STER」の関連作品がほとんど。また、去年やってみたオリコン100位作品の売上枚数推移はこちら(去年5年分しか作らなかったので気合い入れて10年分に延ばしてみた)。
アルバムは前年からさらに減少、シングルは微増という予想通りな感じ。面白いのは、シングルは2009年を境にオリコン年間100位の数値が盛り返し、アルバムは一貫して下がっているというもの。ちなみに2010年からAKB48が年間チャート連続1位を続けており、いわゆる「複数買い」が定着した時期とオリコン年間100位作品の枚数が下げ止まった時期は一致している。シングルは複数枚買いしやすいのでこういう結果になったのかなという感じだけど、一貫して売り上げが小粒化しているアルバムの数値を見るとちと易きに流れていやしないかな……という気持ちにもなる。シングルとアルバムの利益率の違いなどがわかれば色々見えてきそうな気も。
さて次は例年通りの月別比較で少しブレイクダウン。
去年ほど月ごとのばらつきは少ないかなって感じ。10月と11月のシングル売り上げが大きく落ち込んでるのが気になる。
●映像メディアの先行き
映像メディアについても月ごとの比較を。ここ数年は「DVDからBlu-rayへのシフトが進んでいるがDVDの落ち込みが大きすぎ」という傾向。しかし今年はDVDの落ち込みが微減に止まった結果、トータルの数字は伸びました。
単価が高くタイトル数が少ないので、ヒット作品が出るとものすごく伸びるのがこの邪なるの特徴。Blu-ray1作7,000円とすると5万枚売れれば3.5億円(上記グラフでは350)になる。それで市場の0.5%だからね…2015年は2・4・12月が高いが、2月はキスマイ・安室奈美恵、4月は嵐と関ジャニ∞、12月は3代目JSB・ゴールデンボンバーなどが作品を出ている。また、嵐が元日にライブDVD/Blu-rayを一緒に出したのだけど、12月のうちに生産され出荷され販売が開始しているのでその数値も入ってのことだろう。ちなみに嵐はDVD・Blu-rayともに30万枚ほど売れるので1作だけで30〜40億円。下手な月の1ヶ月分の実績を軽々と叩き出すモンスターコンテンツなのである。
去年からNetflixや先行していたHuluをはじめとする定額制動画配信サービスがにわかに盛り上がってきたけど、コンサート放送というのはあまりカバーされていないこともあり、音楽映像市場はしばらくこのままなのではないか、という感じである。iTunesで売られている作品も少ないしね。
●アナログレコード、本格立ち上がり?
さて去年も独立した項を一つ設けたアナログレコード。暦年比較はこんな感じ。アナログレコードについては中古市場の存在は欠かせないのだけどそもそも把握が極めて難しい上、生産を伴わない流通取引であるため新譜と一緒のマーケットとして考えることには個人的に抵抗がある(メーカー脳)。
2015年の売上金額は、去年を大幅に上回った。今年はカセットテープよりも相当上の枚数・金額を叩き出している。ちなみに気になっていたので今年は月別推移も作ってみることにした。
全世界でRECORD STORE DAYが行われ日本も追従した4月よりも、「レコードの日」と銘打ちメーカー側がキャンペーンを行った11月のほうが生産高が上。因みに僕はどっちの月にも1枚ずつ買いました。なんとなく市場が立ち上がりつつあるのかな、という感じのするアナログレコード。ただ、どうしても高付加価値商品ではあるので幅広く売れる商品ではないと思うし、ブームと言っていい市場規模なのかいまいちつかみかねているというのが実情。今後どこまで伸びるのかは正直よくわからない。
●総括のような物
今年は音楽聴取にとってターニングポイントとなる1年になりそうけど、本格的に影響が出てくるのはこれからなのかもしれない。もしかしたらならないかもしれないけど。毎年言ってるけどレコード会社は「音楽を聴く人」をどれだけ増やすかということが最大の命題であることは間違いない(どの業界でも多かれ少なかれ言えることではあるんだけど)。かといって長期的な視野でどうこうしている余裕なんてないわけで、複数枚商法・特典商法でのパッケージ商品延命でなんとか目の前の状況をやりくりしているのが現状。
ただ、CDを売るのか、音楽を売るのか、本当に大事なものはどちらなのかということはほんとよく考えた方がいいと思う。僕自身、Apple Musicを使い始めてからCDを買ってリッピングするのが超面倒になってしまっている。本当に好きなもの以外はほとんど配信(Apple MusicもiTunes Storeも使っている)で買うようになった。なんというか音楽を載せるメディアがついに本格的に変わろうとしているんじゃないか、という気がしてきている。
というわけで来月定額制含めた配信の話をしますのでお楽しみに。
2月 23 2016
2015年の音楽配信市場読み解き
先月CDなどのパッケージメディアの売り上げというか生産状況について色々考察など入れてみたけど、音楽配信の方も年間のデータが出たのでざーっとレビューしていこう。日本レコード協会の有料音楽配信売上実績というデータで、こちらは配信業者からの売上データ提出による物なので生産じゃなくて売上なんですね(そもそも複製コストゼロの配信で「生産」を数えることには意味がないしね)。とはいえ、パッケージメディアの時と言葉を合わせた方が良さそうなので「市場読み解き」というタイトルにしとく。たぶん来年もこのタイトルでいくはず。
はっきり明記しているわけではないけど、日本レコード協会が正規音源を扱っていると認定している証である「エルマーク」を付与されている音楽配信サイトがこの集計の対象になっている物と推測される。iTunes StoreやAmazon MP3などの外資系のみならずLINE MUSICやAWAといった定額制配信サイトにもちろんついている(Apple Musicは記載がないがiTunes Storeに含まれているだろう)し、リスト(PDFです)を見るに各アーティスト・レコード会社等の直販サイトも対象になっているようです。としてもちょっと腑に落ちないところがあるんだけど…それはちょっと後で触れます。
ちなみに昨年までの文章はこちら。2011年と2012年はパッケージと一緒。
2011年:音楽業界はどうヤバくてどうヤバくないかの話
2012年:レコード業界のゆくえ2013(音楽業界はどうヤバくてどうヤバくないかの話 Part.2)
2013年:2013年の音楽配信売上まとめ
2014年:2014年の音楽配信の売上読み解き
ここまでの文章は去年と殆ど同じだけど、基本同じことをあまり繰り返してもくどいので、こちらも適宜参照していただけるとこれ幸い。
●サマリー:定額制配信様々…?
まずは売上数量。
PC/スマホシングル:1億884万8千DL(前年比100%)
PC/スマホアルバム:843万7千DL(前年比109%)
着うた+着うたフル:1482万9千DL(前年比61%)
メロディコール:4,399万4千件(前年比83%)
DL数総計:1億7,811万3千件(前年比91%、ビデオ等その他項目含む)
単曲もアルバムも一緒くたにしておいて数を数えるっていうのは変な話ではある。ここ数年は着うた+着うたフルが急速に落ち込んだ分をPC/スマホ向けでカバーするけどトータルは減少、というところであった。今年までくると着うた+着うたフルは5〜600万件と大した減少数ではないのだけど、PC/スマホ向けダウンロードが停滞しているために今年も引き続きトータルダウンロード数は減少となった。じゃあなんでそんなことになっているのかな、ってところで売上金額。
PC/スマホシングル:174億3,800万円(前年比100%)
PC/スマホアルバム:92億2,900万円(前年比111%)
着うた+着うたフル:23億4,000万円(前年比56%)
メロディーコール:29億5,300万円(前年比79%)
ダウンロード総計:346億8,500万円(前年比100%、ビデオ等その他項目含む)
サブスクリプション:123億9,300万円(前年比159%)
音楽配信売上総計:470億7,300万円(前年比108%)
見て明らかなのはサブスクリプション(つまるところ定額制配信)の伸張とPC/スマホ向けシングル曲の停滞。もちろんその中核にいたのはApple Music、LINE MUSIC、AWAといった第2世代の定額音楽配信サービスだ。ただし、純粋に増えた金額だけ見れば2013年→2014年とほぼ同じだ。ここについては四半期別のデータをもとにここ5年くらいの動きをもう少し詳しく見ていきたい。
2015年の2Q(4〜6月)にAWAとLINE MUSICが立ち上がったあたりからダウンロード売上が頭打ちになっていることがわかる(前掲の数字に出ている通りアルバムはまだ前年度比で上昇しているんだけど、)。また、今年のサブスクリプションの伸張は後半(3Qと4Q)に集中しており(この期間での増加分で30億円であり年間伸び額の66%だ)、第2世代定額制音楽配信が無料期間を終了してもそれなりの人数が有料会員として継続したと推測される。そしてその時期からPC/スマホ向けのダウンロード金額が伸び悩んでいることから、喰い合いが生じているというのもまた事実。しかしこの傾向は世界全体としてそうだしトータルではプラスだからいいかな、という感じなんだろう。
ところで気になっていることが一つある。サブスクリプションの1Q売上は23億4000万円。1月あたり8億円弱、と算出されるわけだ。そしてドコモのdヒッツが2015年の3月に会員数300万人突破を発表したが、この料金が300円か500円のいずれかであることから間をとって一人400円とすると1月あたり12億円の売上が上がることになるわけだけど、計算合わなくない?????実際にはdヒッツには初月無料制度があったりとかで割引も講じられているわけだけど、内訳がわからないから色々見えない(当たり前だけどdヒッツはLマーク認証サイトである)。
何が言いたいのかというと、(数字の不明な点はあるにせよ)今の定額制音楽配信についてはみんなが注目しているApple Music、LINE MUSIC、AWA等と同じくらいにドコモのdヒッツもプレゼンスがあるということ。2013→2014の伸張はかなりここによるところが大きいと考えられる(会員数の推移を見ると顕著)。しかもdヒッツは今年に入ってから嵐の楽曲を配信開始した。ジャニーズの楽曲は他のところでは全然出てこないのに、である(ちなみにSMAP、Sexy Zoneなど一部のジャニーズグループはレコチョクに単曲配信をしているが、あくまでレコチョクのアプリでしか聴けない)。
どうしてか、という理由の一つにdヒッツの配信方法がオンデマンド型ではない、ということが挙げられる。ドコモのdヒッツの説明ページにはこうある。
どういうことかというと、オフライン保存できるのは月10曲のみであり、基本はドコモが用意したプレイリストに沿った形(AWAのライトプランみたいな感じ)で使ってね、ということだ。この形式ならCD等の購入につながるとして許可する権利者も結構多い。例えばサザンオールスターズはdヒッツに280曲も出している(スマートフォンでリンク先に行くと楽曲試聴もできる)。そんな形態ながらも嵐はジャニーズとして初めてこういった定額制音楽配信サービスに参入した、というのが相当なインパクトなので、これからの動向に注目なわけ。もしかしたら、dヒッツがサービスを拡充していくことで定額制音楽配信サービスのダークホースになる可能性もありうる。この楽曲群をそのままオンデマンド型に持っていければ、という仮定の話であり結構難しいとは思われるが。(2/25追記:dヒッツには「携帯電話契約時にセットで結ばせる所謂「レ点営業商品(申込用紙にチェックマークを入れさせて契約させる商品)」であり、やめ忘れによりあまり使われてないのではという指摘がある。それは確かにそうであるが、ドコモ側でもその問題は認識していて改善に取り組んでるゆえのラインナップ改善であろう。実際ドコモ側の発表ではあるがアクティブユーザーの比率は改善してきているようである。)
さて、ここでどんな曲がたくさんDLされたかも記しておこう。正確な数字はないけど、2015年にリリースされた楽曲で、その年のうちに日本レコード協会でプラチナ(25万DL)以上のランクに認定されたのは以下の楽曲(ページリニューアルにより条件をつけて検索できるようになったから助かる)。
ダブル・プラチナ(50万DL〜)
プラチナ(25万DL~)
個人的な感触としては、着うた全盛の時とそんなにラインナップ変わらないような気がしている。シングルトラック単位だとそんなもんかな、という印象。そして去年は松たか子の「Let It Go」というミリオンヒットがあったのだけど、2015年はそこまで突出したものはなく、全会一致で決まるような「1年を代表するようなヒットソング」はないという状態かな、と。まあ敢えて言えば「トリセツ」なのでしょうが、年が明けてからbuck numberの「クリスマスソング」もダブルプラチナになっているので、突出している、というわけでもないかな。
そんな感じで2年連続で売上金額が前年度越えした日本の音楽配信市場。定額制配信が伸張したものの、ダウンロードは頭打ち。そんな中でこれからどうなるか展望のような物を述べていきたい。
●相変わらずのパイの少なさをどうするかという話
去年のこの記事でテイラー・スウィフトがSpotifyに「NO」を突き付け最新アルバム「1989」を大ヒットさせた、という話を書いた。そして彼女は去年もApple Musicの立ち上げに当たって分配率で揉めるという騒ぎを起こした。この話自体はApple側の反応があまりにも早かったことから一種のプロレスみたいなもの、あるいは炎上マーケティングみたいなものなのかな、と推測されるところだけど、メガヒットを出すミュージシャンの動向がこういったサービスの生命線を握っていることを露わにした(「ブロックバスター戦略」みたいな話ですね)。そういった話では、去年アデルが「25」を一切のサブスクリプション型配信サイトなどに通さず、1500万枚以上を2015年のうちに売り上げた。
日本でも大物がサービスの命運を動かす事情は似たようなところがある。そういった大物ミュージシャンにフォーカスすると最も楽曲数のあるAplle Musicですら、iTunes Storeと比べると配信カタログ数はかなり不足しているし、iTunes Store(やmoraやレコチョク)ですら未配信の大物ミュージシャンは未だ多い。なぜ未配信かというと、そもそも配信しなくても買ってくれる人の量が多いからわざわざ配信でディスカウントする必要がないからだ。だからこそ嵐の参入は驚きをもって迎えられた(いや、dヒッツのことなんかみんな見てないから興味ないか…?)。ここを取り込めないと音楽配信サービスが大きく伸びることは見込めない。そもそも音楽配信サービスの売上額というのはパッケージメディアの1/4〜1/5くらいなわけですから。
日本はレンタルCDがあるなど極めて独特な環境であり配信への阻害要因は大きいんだけど、今時CDドライブのないPCも増えてきているし、そもそもPCない人もずいぶんいるし(この5年で個人向け出荷台数も相当減ってしまっている)新しく音楽買ってもらおうとするのであれば配信の方が早いわけ。インフラ面でもCDが今後伸びる芽はないので、業界の命を守りたければ配信を通じて「音楽を聴く人」を増やす必要があるだろう。そもそも音楽自体興味ない、「金払う価値ない」位の考えの人が今の日本のマジョリティである事は疑いようもないので、dヒッツやAWAライトプランや、Spotifyのようなフリーミアムなど、安い価格あるいは0円でリーチを伸ばす施策も欠かせないだろう。フリーミアム自体はリスク高くてやらなそうな気がするけど、YouTubeでしか音楽を聞かない人の多さやLINE MUSIC無料期間終了後の反応の悪さはさすがにわかってるでしょ、とは言いたい。まだその先に「お金払ってもう少し色々自由に聴かない?」みたいな道は用意しておいたほうが良いのでは、というだけ。なんだかんだ制約などありつつ配信の利便性は高いので(この半年くらい、Apple Musicにないものはよほど好きなミュージシャンでない限りCDで買わずにまずダウンロード配信を使う、という流れになっている)、どんどん良い方に変わっていってほしいなあという次第。
By たにみやん • Music, 音楽業界レビュー・売上まとめ •