11月 16 2015
「30代の僕達が2015年に聴く音楽」についてずっと考えてるという話
このブログでは定期的に日本人の音楽受容みたいな話を書いているけど、日本では30代になると音楽を熱心に聞いたり追っかけたりしなくなる、というデータがある。例えば下記のエントリ。
理由は割と想像がつくところで、仕事での昇進あるいは転職・結婚・育児などライフスタイルが大きく変わる出来事がある、という話が大半だろう。ではあるんだけど、もう一つ大事な話として「30代に合った音楽が無い・もしくはアクセスしづらい」みたいな話もあるんじゃないかな、というのも日々感じている。ポピュラーミュージックは若者向け、みたいな話は聞かれて久しい(もちろんヒットする物には幅広い層にリーチする魅力がある)けど、こうも嗜好の細分化・クラスタ化が進んだ現代ではそれぞれの年代にリーチする音楽というのをもう少し考えてみてもいいんじゃないかな、と言うことをここ数年ずっと考えていた。そんなわけで、いくつか最近自分で見聞きした物をピックアップしつつ色々考えてみたい。
●ズバリ「30代」を描いたPOLTAとONIGAWARA
そもそも歌詞にその楽曲の主人公の具体的なパーソナリティを入れることってどちらかというと少ない。なんでかというと、その付加した属性に当てはまらないリスナーに共感されづらくなるからだと考えられる。なんだけど、裏を返すと「ターゲットを絞り込んで強く共感させる」という手法に用いられることもあるわけ。そんなところで最近「30代独身」みたいな要素を思いっきり歌詞に盛り込んできた物をいくつか立て続けに聴いて「これも一種の時代の流れなのかな…?」なんて思ったりした。
1つめはPOLTAの「SAD COMMUNICATION」。noteにクソ長いレビューを書いたのだけど「みそじれーしょん」の「あたし このまま死ぬのやだな」は超刺さった。「それでも前を向く」も含めて共感ポイント多数なんだけど、聴きすぎるとちょっと辛くなる(苦笑)。しかしながら「30」も含め、書いている歌詞世界はかなり真に迫るものがあるなあと思ったり。
2つ目はONIGAWARAの「エビバディOK?」の「ONIGAWARA SUPER STAR」では「不謹慎とかじゃなく男子30にして嫁をめとらぬ者は人間失格 じゃあ僕はもうリタイアします音楽と一緒に心中します とか言ってみたいけど言うわけない 早く人間になりたーい」なんて30代独身男性視点の歌詞が出てきたりする。。銀杏BOYZとかサンボマスターとかが10年前くらいにやってたやってたリビドー全開のロックより若干思春期抜けた感じに仕上がってる。年末にもモテたい男子の妄想ソングをリリースとのことで、確かにそっちの方が今っぽい感じだ。
とはいえ、ここまで書いた結果こういった歌は「ライフステージが変わってない人」のための歌なんじゃないかと気がしてきた。じゃあそういう人も含めてどんなのがフィットする広い意味での「30代にマッチする音楽」かな、みたいなのが次のお題。
●グッドポッポスみたいな話、それから歌は世につれみたいな話
最近思うのはじっくり聞かせてくれるようなポップスがより心地よくなっている、ということ。この辺は好みとしか言いようがないんだけど、自分としてはいわゆるギターロック的なものから年をおうごとに離れている自覚はある。エアジャムも98世代もメロコアもリアルタイムで一切通らなかったという人間なのでそうなのかもしれないけど、それ以上に自分の年齢にマッチしてきているんじゃないか、という感触がある。
その代表的なのは先日あったクラムボンの日本武道館ライブ。クラムボンはここ5・6年くらい見てて、3人だけで織り成す強靭なアンサンブルに常に圧倒されてきていたんだけど、それが日本武道館というスケールでも普通に機能してることに驚いた。両国国技館でやった時よりもはるかに響きも良かったように感じるんだけど、機材のアップグレードによるものだけでもないだろう。また、アンサンブルという観点からは先月見に行った吉田ヨウヘイgroupのワンマンライブも相当に良く、こう行った「音を聴かせる」ことと「グルーヴ感」を両立したポップスなんかは正直に言ってもっと僕ら世代の人間に聴いてほしいと思う。クラムボンがイオンモールツアーをやった理由には「子育て世代に入った自分たちのかつてのファンに見てほしいから」というのがあったけど、確かにこういう音楽をカジュアルに聴く機会があったらなあという感じはある。吉田ヨウヘイgroupのライブを見終わった後にはほんとそう思った。あと「ホールで見たい」というのも。
もう一つ、そういった聴かせるポップス方面として良かったなあと思うのは先月行われたTWEEDEESとROUND TABLEの対バン。ROUND TABLEは花澤香菜のバックバンドとしてもやっているメンツが半分以上で、心地よくかつ軽やかな音が印象的だった。そして何よりもゲストコーラスの藤村鼓乃美(ワンリルキス)のソロ楽曲「SUMMER VACATION(北川さんプロデュース)」がめちゃくちゃ良かった(CD再販してください…配信でもいいんで)。
それを受けてのTWEEDEESも、6月のワンマンライブからかなり場数を踏んでいたためかバンドとしての一体感も出てるし各曲における歌い方や見せ方が「バンド然としてきた」印象を受けた。沖井礼二feat.清浦夏実状態だったデビュー当初からするとバンドとして成立してきているなあと。その実感が出てきていることが清浦さんの次の台詞からもうかがえる。
「みんなCymbals好きでしょ? 私も好きだよ。でもね、私がCymbalsのこと忘れさせてあげるから! Cymbalsよりもほかのバンドよりも、TWEEDEESをもっともっといいバンドにしていくから!」
Cymbalsの「怒れる小さな茶色い犬」を披露した後の盛り上がりを受けての物だったけど、率直に言って僕はこの言葉を聞けて、ポスト渋谷系チルドレン(というかCymbalsチルドレン)としてすごく嬉しかった。Cymbalsの再現みたいな物を求めるんじゃなくて、現在進行形のバンドとして進んでいくんだ、という決意が聞けたことが本当に嬉しかった。
特にここ数年は90年代のヒット曲を中心にカバー曲やリバイバルが大盛り上がりで、「もう新曲いらない」みたいな気持ちの人も多いかもしれない。でもやっぱり「歌は世につれ世は歌につれ」という「音楽と時代・思い出の結びつき」みたいな物は、空気感薄くなったとはいえ絶対にあると思うわけ(前節で挙げた「30代独身」の歌なんかもそう)。懐メロ商売自体は大して否定しないけど、それ自体が過去にばっか目が向いているよねえということが、僕にとってこの手の物にあまり手を出したくならない理由。だから、過去に頼らない自分たちの歌をきちんと作って聴かれていくぞ、というその意思表明については本当に拍手したい。
特にこのグループにはCymbalsファンと清浦夏実ファンという二つのクラスタがあって、それぞれが(僕も含め)かなり過去にとらわれている印象があったので、その辺について思うところはあったんだろうなあとも思うわけ。ここからに本当に期待したい。Cymbalsのアナログ再発、結局注文しちゃったけどそれはそこから沖井さん達が活動続ける原資になればなあという気持ちもあってであり、やっぱもっとこの先の展開を見たい。まずはCymbalsや清浦ソロの曲やらなくてもいいくらいにレパートリーがほしいよね。笑
そんな感じで、自分の好みに自覚的になりながら、そこにマッチする音楽を引き続き探していこうかな、と思う次第。いいのがあったらもちろんここなどでピックアップする予定。近日1本紹介する予定(最近遅筆だけど割とすぐやる予定!)
12月 1 2015
第4回アイドル楽曲大賞2015に投票しました
この記事を書くともうすぐ今年も締めの季節に入りつつあるんだなあ、という気持ちになる。そんなわけで今年の振り返り第1弾、アイドル楽曲大賞への投票内容公開です。2013年と2014年の記事はこちらなんで、それぞれ見て頂ければ。
そんなわけでさくさく行きますよ。投票サイトはこちら。
メジャーアイドル部門
ノミネートされてる物の中から、この賞にマッチしているか、という観点から若干の絞り込みをしました(ぶっちゃけた話Silent Siren、清竜人25、Perfumeなどを外しました)。例年こういうランキングの時には1ミュージシャン1つとしているんだけど、今回ばかりは二つ選ばせてほしい。配点は書くのめんどくさくてやめたけど、1〜3位にほとんどの持ち点を振り分けてます。
1位:Negicco「ねぇバーディア」
Negiccoの纏う雰囲気とレキシ池ちゃんのポップス職人としての才能が化学反応を起こして出来た名作。
2位:lyrical school「ゆめであいたいね」
tofubeatsとリリスクのコンビでもトップ3に入る傑作ではないだろうか。
3位:Negicco「光のシュプール」
2014年12月に出た曲なので投票。個人的には「まず、この曲よりも良いか」が判断基準になった。本当は1つのグループを2つ入れたくなかったんだけど、どうしても片方を切ることができなかった。
4位:BABYMETAL「Road Of Resistance」
世界本格進出後の新曲の中ではピカイチ。というか、他が…(まあ音源出てないから投票のしようがないんだけど)
5位:乃木坂46「今、話したい誰かがいる」
最後の1曲は色々考えたけどこれかな~。全体的にきれいにまとまってるな、って感じ。
ちなみにはっちゃけ体操がなかったのがものすごく悔やまれる。早く音源化してくださいお願いします。
これだけ音源化されても困るけどw
インディーズ部門
実は、今回相当苦労した。コメントは書きません。
1位:amiina「canvas」
2位:星野みちる「ディスコティークに連れてって」
残念ながら音源アップなし
3位:Faint★Star「BoyFriend -A.S.A.P-」
4位:RYUTist「メクルメクルメ」
5位:せのしすたぁ「moment」
Especiaがメジャーデビューしたのとライムベリーがああなっちゃってから聴いてないのと単純に色々と動向を追いかけるのが大変になったのもあり、選出には苦労した。この「追うのが大変になった」というのが今年のトピックかもしれない。インディーズ部門についてはホントにこれくらいしか聞いていないのが実情。あと意外に音源未リリースのものがあったりとか。ハイタッチガールズみたいに。
Tパレ勢なんかは実際インディーズだしこっちに入れてよ……とも思ったけど、そうすると票はそこに偏りそうな感じがあるので今の配置でいいのかもな、と思いましたとさ。
アルバム部門
1位:lyrical school「SPOT」
2位:Negicco「Rice & Snow」
3位:callme「Who is callme?」
ベビメタのライブ盤とか入れようかな、と思ったけど入ってなかったのでやめました。いや入ってても入れなかったと思うけど。callmeはいいんだけどちょっと優等生すぎる感じがする。あるいは習作感が漂っているというか。Negiccoはまあもうちょっとできたんじゃないの?みたいなところはあり。いやそれはリリスクもそうなんですが。なんというか動向追ってるところは出来がある程度予想ついちゃってるところ多いから評価しづらいというか全体的に辛めの評価になりがち。それでもこの辺がトップを占めるあたりあまり僕は動向を追ってないなあ。いや他にも聴いたんですけどね。
推し箱部門
lyrical school
来年もよろしくお願いします。
全体的なコメントとか
自分自身が夏頃からアイドル現場に行く回数が相当減ったのもありなんかコメントしづらいところあるけど、「シーンの疲弊感」「楽曲派向けアイドルの生き辛さ」みたいなのは今年割と感じた。
WASTE OF POPSさんのところでやってるアイドルライブキャパ定点観測にもあったけど、最近ライブ会場をバンバン上げていく攻め方をするアイドルが増えている。WWW→リキッド→赤坂BLITZ→Zepp・野音・中野サンプラザみたいな倍々ゲーム。そしてこのインターバルも半年だったり、それ以下だったり。さらにはその大箱ワンマンの週にCDリリースして物販も展開して一気に収穫、みたいなのが多い。しかしお客さんの数も有限だけど1人のお客さんの財布の中身も有限なのだ。スパンが短くなればそれにつれ厳しくなる。だいたいリキッドくらいまではうまくいくんだけど、そこから先で急速にきつくなることが多い。あとこれ失敗するとアイドルとそれを取り巻く諸々が一気に後ろ向きになる気がする。自分が見てるもの以外もそんな感じの話が色々ある印象。
スパンが急速なので楽曲の良さでじわじわ……みたいなのはとても難しい。というか楽曲が良いってなんだ、みたいなことを最近思う。2月くらいに行ったトークライブで南波さんが言ってたけど、「曲がいい」のは当たり前なんだよね。みんな力入れてるので、ホント好みの話でしかない。そうなるとたくさん積む人がいる方が伸びる。「楽曲派」は色々目配せしつつ広く薄く買っていくからそういうファンが多いとなかなか色々伸びない。みたいなのがここ最近の実感。解散商法使われたバニラビーンズなんかはかなりそういうとこあるよなあとか。そういえばTパレ最近あまりCDリリースしてないけど大丈夫なのか、と言われたりしてる。実際のところどうなのかな。
全く実になる話でなくて後ろ向きで申し訳ないなあと思いつつ、なんだかんだ楽曲やらパフォーマンスやら何やらを通じて楽しませて頂いているのは事実なのでアイドルの皆さんには感謝である。
さあ、ここから一気に年末モード突入ですね!
By たにみやん • Music, 年間ベスト •