1月 2 2015
COUNTDOWN JAPAN14/15に行ってきた話〜拡大するロッキング・オンフェスの現在地
あけましておめでとうございます。今年もなるべく他の人がやらなそうなことをやりたいと思っていますので、当ブログのご愛顧よろしくお願い致します。
というわけで、今年の最初の記事は、毎年行っているCOUNTDOWN JAPANの話。というかこの話で始まるのも毎年恒例の話である。
というわけで今年は30と31日の2日間行ってきました。見たのは下記の通り。
30日:SCANDAL→くるり→チャットモンチー→きのこ帝国→tofubeats後半→UNISON SQUARE GARDEN→TM Network→大森靖子&THEピンクトカレフ→ねごと→indigo la End前半→the HIATUS
31日:清竜人25→Fly or Die→シナリオアート→Superfly(最初と最後)→でんぱ組.inc→KREVA(年越し)→女王蜂→People In The Box→竹原ピストル(ズ)
時間が長いはずの31日の方が30日より見てる物少ないってどういうことや!
全部に個別の感想述べるのはあまりやりたくないです。というのも清竜人25が底抜けに楽しかったのでそれ以外の記憶があまりない。笑。既に発売されていたシングルの曲以外を聴くのも初めてだったけど、どれも面白い曲だった。個人的には「Call♡Me♡Baby」のトイポップ感がすごく好き。Capsule初期〜Hazel Nuts ChocolateやPlus-tech Squeeze box辺りのアキシブ系の臭いもする。でもこれも次のシングルには入らないんだよね〜。というか次のシングル「A・B・Cじゃグッとこない!!」のカップリングも披露されなかったのでまだ色々残しているようだ。恐ろしい…
それ以外でよかったのは大概30日。くるり・チャットモンチー・きのこ帝国・ユニゾン辺りかな〜。あとFly or Dieはやっぱりお笑いの範疇のような気がしなくもなく、グループアイドルやゴールデンボンバー以上に過激なブッキングなんじゃないか…という印象がぬぐえない。面白かったけどね。
とまあその辺はさておき、今年は随分と会場レイアウトが変わったりブッキングにも一定の傾向があったのでその辺の話を中心に。
●会場拡大の話
今年最大の変化はこれまで1〜8ホール+イベントホールでやっていたイベントを9〜11にも拡大したことでしょう。会場の拡大はイベントホールを使うようになった2008年以来のことで、実際どんな運用になるのかはとても興味津々な話であった。
んで、蓋を開けてみたら結構変更があったので下記に箇条書き。
- 9〜11ホールはクローク・物販・リクライニングシートのスペースに
- そしてかつてクロークがあったホール8がまるまるGALAXY STAGEになりキャパシティが増えた
- リクライニングシートがあった辺りまでEARTH STAGEが伸びてきて0.5ホール分面積拡大
- GALAXY STAGEがあった7ホールに例年はCOSMO/MOON STAGE間にあった各種ブースを移設
- COSMO/MOON STAGEが、前述のブースがあったところまで伸びてきて若干拡大。
詳しい図は公式サイトの去年のエリアマップと今年のエリアマップを比べてみるとよくわかる。
最大の懸念事項は1〜8ホールと9〜11ホールとの間は直接繋がっていないので通路に何かしらの防寒対策がなされるのかどうかだったが、結論から言うと何もなかった。雨よけの屋根みたいな物は元々備わっていたのだが、横の風をよけるものは何もなかったので昼はともかくとして夜は随分寒かった。3日目の終演後の時間・4日目のカウントダウン後は大体それなりに人がいるのでそんなにダッシュも出来ず。一度大晦日の21時頃に物販に行きたくなり9〜11ホールに行ったけどその時も通路はがら空き、というわけではなかった。
そもそもこの拡大自体が「チケットを取れない人が増えたため」と説明されていて(因みにRIJFが2日間×2になってるのも同様の理由)、それ自体は支持するんだけど、その分細かいところでRO社フェスの強みであるホスピタリティに詰めの甘いところが出てきている、というのは昨年と変わらない傾向だったので、その辺は次回改善してくれると良いなあと思います。とりあえず7ホールにも飲食エリアが出来たおかげでベンチの設置数が大幅に増えたため、去年までの「人気アーティストがやってないと座れない」みたいなことはなかったのは個人的にはめちゃくちゃ好印象。おかげで足があまり疲れなくて良かった。
ただし、COSMOとMOONが近接したことにより音被りが頻繁に発生するようになってた。これはちょっといただけないなあと思ったし観客だけじゃなくてミュージシャン達も困ると思うので、来年以降は指向性の高いスピーカーを入れるなり再度場所調整するなりして直してほしいなあ。あと、ステージ中程の辺りにも出口を作ったことにより音漏れも増えてた。飲食エリアでも聴ける!といえばポジティブに捉えられるけど。笑
因みに公式発表では4日間での来場者は18万人。去年が16万人だったので、1日辺り5000人増えてるわけだけど、それでも余裕は若干あったのできっと来年も増やすだろうな〜。因みに過去の来場者数がCDJ公式Webサイトに載っていたので今年のデータと合わせてグラフを作ってみた。
当然ですが06/07〜08/09にやっていたWestは抜いた数字。動員が大きく増えている06/07は4日間開催になったときですな(当時は29〜1/1の開催で、翌年から現在の日程に)。今回はその時に次ぐ増え幅かも。
●ブッキングなどの話
今年のブッキングおよびタイムテーブル配置の傾向の特徴は大きく二つあって、「ジャンルの再調整」と「新世代バンドの台頭」に集約されるんじゃないかと考えている。
まず最初の「ジャンルの再調整」について。昨年のRIJFでは1日辺り2〜3組の所謂グループアイドルが出演していたわけだけど、今回は29・30・31に各日1組だけ(清竜人25は除く)にとどまったかわりに、昨年ASTRO ARENAに押し込まれていたのとは対照的に今年はGALAXY・MOONといった通常エリアのステージに配されることになった。その上で、各日にブッキングされたのは℃-ute、チームしゃちほこ、でんぱ組.incといった今年日本武道館でライブを成功させたグループのみとなっている。ある程度厳選した上でブッキングしていることはわかる。
その一方で28日にはLiSA・Kalafina・OLDCODEXといったアニメソング分野の人気歌手をブッキング。こちらもLiSAは2014年に日本武道館公演を行っていて、KalafinaとOLDCODEXは2015年に日本武道館公演を行うことが決まっている。所謂ロックフェスをアウェーとするアーティストをブッキングしてジャンルの交わりを醸成するというのであれば単体でもそれなりに集客力があるミュージシャンでないと難しい、というのが運営サイドが出した結論なんだろう。
その煽りを食ったからなのか、毎年ブッキングされていたボカロ勢はごっそり抜かれていたのが地味ながらもインパクトの大きい変更。ある意味グループアイドルよりも前(おそらくボカロ人脈からの初登場は11/12に出演したgalaxias!のDECO*27)から出演実績を重ねていて、去年は年明けのアストロアリーナに3時間ほどの「ボカロユニバース」が開催されるくらいまでなったところに今年ゼロというのはなかなか厳しい話であり、ここはシーンがあまり交わらなそうだという結論が出たのだろうか、あるいは武道館級のミュージシャンが出てきていないということか。次のRIJFではどういうことになるのか、というのが一つの注目ポイント。
それから今年は若いバンドのステージ昇格が目立った。WHITE ASH、グッドモーニングアメリカ、ゲスの極み乙女、KEYTALK、キュウソネコカミ、パスピエ、東京カランコロンがGALAXYに昇格し、KANA-BOONはEARTH STAGE。その一方で長年EARTH STAGEでずっとやってきたバンドがGALAXY落ちするケースも随分見られ、転換期にあるのかな、という印象を受けた。上記に挙げた若いバンド達には、所謂「高速4つ打ちロック」みたいなフィジカルに訴えかけて盛り上げることを重視するバンドも多く、その勢いはまだまだ止まってなんかいないということが改めて実感されるところ。音楽メディアやブログ界隈なんかではその辺に対するカウンター的言説が出てきてるけどその辺はまだマイノリティで、そういった言説が実効性を持つにはもう少し時間がかかるだろう。
とはいえ、なんだかんだでこれだけのラインナップが出てくるとそれなりに見所あったし、快適なのは間違いないので今年の年末もきっと行ってるだろうなあ。こういう風に色々考えたりあっちとこっちをつなげたりしながら今年も書いていきたいと思いますのでひとつよろしくお願い致します。
5月 14 2015
VIVA LA ROCKとオーディエンスの「ノリ」の話
さいたまスーパーアリーナで行われた春フェス「VIVA LA ROCK」に今年も行ってきた。チケットを買って参加したのは初日だけで、残りの日は屋外のフリーライブだけ観覧。地元を盛り上げようとしてくれてるし、ラインナップも他の春フェス(あるいは他の季節のフェスなどと比較しても)新人・新しい潮流のピックアップに熱心な印象があるし、何より会場近いしで今年も行ってきた次第。因みに外側のけやきひろばで行われているVIVA LA GARDENには5月1日から5日間連続で行っているのだけど、それはまた別の話。
因みに見てきたのは次の通り。
5月3日:KANA-BOON→SHISHAMO→Indigo La End→FOLKS→cero(冒頭2曲のみ)→Awesome City Club→KICK THE CAN CREW→スピッツ→BOOM BOOM SATELLITES
5月4日:大森靖子
5月5日:ザ・チャレンジ→Yogee New Waves
4日・5日はビール飲んでた時間の方が長いかもしれない。とりあえずスピッツがめちゃくちゃ良くって見に来て本当に良かったと思えたのとちょっとだけ聴いたceroの新曲がむちゃくちゃドープで凄いことになっていたのが印象的だった。
イベント自体の感想を先にしておこう。まずフェスのインフラ面の話。新設のTSUBASA STAGE。そのライブ時間だけ出入り口が変わるという変速設定だったけど、導線の面ではそんなに混乱はなかったように感じている(唯一の例外は初日の銀杏BOYZ)。屋外で駅近くのため音量そんなに出せないので、距離を取るとどうしても風で音が流れたりしてしまうのは仕方ないかな。ただ、このステージの設置によって昨年あった「本会場とVIVA LA GARDENの分離感」みたいなのはなくなってて良かった。
オトミセ・イベントブースは行かなくて、どんな様子か結局確認できなかったのが惜しいんだけど、昨年200レベル(入り口入ってすぐ)でやっていたトークイベントを最上階の500レベルまで移したのは導線面からしてもとても良かった。
当日はJAPAN JAM BEACHという競合(と言っていいよね。同じようなメンツながら新人を排してウケるメンツに絞り2,000円も安いチケット出してきたんだから)があったからか昨年同様SOLD OUTにはならなかったものの、ふたを開けてみると前年並みもしくはそれ以上くらいの人出だった。その結果かデイタイムに食事処がめちゃめちゃ混雑していたのが大変残念。どの店も数十分・あるいは1時間以上並ばないと厳しそうな感じだった。夕方前くらいまでそんな状態だったけどヘッドライナー辺りの時間帯にはずいぶん空いてて快適だったので、店増やせっていう話にはならなそう(余っている場所もそんなに無いしね)。
概ねそんなところで、食事難民になった以外はインフラ面含めて昨年から向上していた感じがある。来年はさいたまスーパーアリーナが改修工事を予定していることもあり、5/28-29の2日間で行われることに。「埼玉であること」を強調し、盛り上げようとしてくれているイベントなので、来年も1日は行こうと思っている。
さて、ここからは去年と割と同じ話。昨年書いた話を下敷きにはしているけど、繰り返しばかりではないはずです。
●ロックのスポーツ化の話、復習
去年のVIVA LA ROCKの後に「高速4つ打ち邦ロック」「画一化する反応」「ロックのスポーツ化」みたいな話で一部界隈で話題になった。そして今年どうなったかっていると、よりその傾向は顕著に、というかミュージシャン側も含めて二分されるようになってきた。まずは昨年に続き前日参加された方のこちらの記事。
2015-05-07 – WASTE OF POPS 80s-90s
ライブ・ロックがスポーツ化しているっていうのはレジーさんのブログによるとROCKIN’ON JAPANの2013年2月号でアジカンのゴッチが指摘していた話、ということだけど、このブログの副読本と化している「オルタナティブロックの社会学」を元に再度整理し直しておきたい。
レジーさんやゴッチさんの指摘するスポーツ化は「動きの定形化」みたいなところに対する指摘という認識だけど、その前に「ライブで体を動かすこと」重視=フィジカル重視という潮流があるということは間違いない。因みにこの本が出版されたのは、昨年のVIVA LA ROCKの直前である。まさにこの後述べられたことが全て詰まっている(省略したがサークルモッシュやウォール・オブ・デスに関する描写もあり、その点でも前掲のブログと一致する)。そして、現在のいわゆる「邦ロック」が、こういったオルタナティブロックの影響下にあるバンドやそれを換骨奪胎したかのような新世代バンドで占められていることからしても、とても納得のいく話だろう。
柴那典さんはクラムボンのミトさんがインタビューで「EDMと邦ロックは(ある一面においては)同じ機能を果たしてる」と指摘していることをはてブのコメントで述べていたが、ミュージックマガジンに掲載されたそのインタビューではこう述べている。
さっき数行上で見たばかりのような表現ではないか。何度も言うけど「オルタナティブロックの社会学」の出版は2014年の5月頭だ。
ところで上記「ロックのスポーツ化」の話の1〜5までは別に日本特有と言っているわけではない。それでは日本で高速4つ打ち邦ロックがもてはやされるようになった背景は…というところでこのGWに遭遇した出来事から紐解きたい。
新人歌手である藤原さくらを見ていた人はそれなりに音楽に造詣の深い人が多かったからいろんなリズムパターンに順応できてて裏拍で打てた、というふうに推測するところである。前に「亀田音楽専門学校」の4つ打ちの回のケーススタディでもagehaspringsの玉井さんが「日本人にはグルーヴという概念がない」と著書で述べていた話を引き合いに出したけど、そもそも選択肢が少ないのかもしれない。それもあってインスタントにノれる物に人気が集まっていっているのではないか、というのが僕の認識。
●ロックだけではないスポーツ化・画一化、「盛り上がり」は正義なのか?
「インスタントにノれる」あるいは「インスタントにアガれる」というのが今のライブ現場で起きていることを掴む一つのキーワードなのではないかと最近感じている。リアクションの定型化はそのわかりやすい例なんじゃないか。みんなで同じことして一体感が出てくるとアガるもんね。だからTOKIOみたいな知名度の高い人気者がもてはやされるわけだし、アイドルネッサンスみたいに絶妙なカバーを高い練度でパフォーマンスするグループが耳の早いアイドルファンの間で急速に広まるわけだ(制作陣のインタビュー読んだけど、最初からカバーで行くこと決めてた辺りも含め極めて考えて作られたグループだと感じている)。
「アガる」「沸く」「エモい」「多幸感」等々色々表現されるけど、いつも思うのは「どんな曲にも似たり寄ったりのリアクションを」ということと、「果たしてこういう状態が唯一のゴールなのだろうか」ということ。前者は何度も思ったり言ってるから付け加えることはないんだけど、「楽しみ方は無限大」みたいに標榜しても結果として同じ光景に収斂しているのを見ると何とも言えない気持ちになる。この辺はもっと説明できるようになりたい。
それから後者の「盛り上がりが唯一の正解か」という言葉に対するカウンター的なライブだったのがこのVIVA LA ROCK初日のクロージングアクトを務めたBOOM BOOM SATELLITES。本編のセットリストは全て2013年のアルバム「EMBRACE」以降の楽曲のみというセットリスト。この「EMBRACE」は、その前年に川島道行がライブ直前に倒れ、アルバム完成後に脳腫瘍の手術をしたということもあり、より内省的・あるいは暖かみを持つ音像の作品へと大きく変化している物だ。攻撃的な感じではない。
もう少し具体的な言い方をしよう。この日のBOOM BOOM SATELLITESのライブでは「EASY ACTION」も「KICK IT OUT」も演奏されなかった。アンコールで「DRESS LIKE AN ANGEL」を演奏したが、本編は全部最近の曲で、唯一アッパーな「ONLY BLOOD」ですら、これまでの彼等の代表曲に比べるとソリッドで攻撃的なサウンドという感じの曲ではない。しかしながら率直に言ってこのライブはとても良かった。みんなでおそろいの動作をしたわけでもなく、そもそもそんな曲調でもない(4つ打ちは割とあったかな。でも早いのばっかではない)けれども、じわじわと心の奥底にわき上がってくるものがあった。すぐにTSUTAYAにアルバムを借りに行ったわけだけど、ブンブンの新しいアルバム、とても良いです。
色々言ってきたけどなんだかんだでこの流れが止まるような気はあまりしていない。だってこの定型化みたいなのって、4・5年前くらいから邦楽ロックフェスに行く度にずっと気になってきていたことだし。UNISON SQUARE GARDENの田淵さんがWebラジオで今のライブのノリの傾向を「オーディエンスの、演者とコミュニケーションをとりたいという気持ち(繋がりたい欲)が強まっている結果ではないか」と分析していて凄く納得がいったんだけど、だとするとコミュニケーションが(形の上では)しやすくなったこの時代では当然の帰結というように思えてくる。そしてこれからはもっとそうなっていくのかな、という気持ちにもなる。僕個人としては自分の聴きたいように聴キリアクションするってだけなんだけど、このまま傍観していると現代のライブのレールに乗っかれないミュージシャンがどんどんフェスからはじき出されていって先細りになってしまうんじゃないかなあというのが心配(もちろんフェスが全て、ということを言うつもりはないけど主要な「新しい音楽に触れる機会」ではあるからね)なのでこういうことを言っているというところもあったり。
なんだけど、Awesome City Club(大入りではあったけど他の新進ロックバンドみたいに規制にはならず)やcero(客入りはぼちぼちってくらい)なんかを、例えそこまで集客に結びつかないとわかっていてもきちんと意志を持って呼んで紹介してくれようとしているVIVA LA ROCKにはとても好感を覚えているので、来年も行く予定です。
By たにみやん • Music, フェス •