10月 6 2011
モテキ世代の「モテ曲」よもやま話
先週末に映画「モテキ」を観てきた。原作も全巻所持し(といっても全4巻だけど)、ドラマも全話欠かさず見た僕からしても、非常に良くできていたし面白かったと言っていいものだった。細かい感想はまた別途書くとして、今日は別の観点(といってもコアになる重要な観点)でこの映画についてつらつら話そうと思う。そう、音楽。原作者の久保ミツロウ氏がものすごい音楽好きなこともあり、原作ではサブタイトルに数々の楽曲のタイトルが使われ、ストーリー中でも非常に深い役割を果たしている音楽。
僕は主人公の藤本幸世の設定年齢である31歳より一つ下なので、同世代として、そのモテ曲についてうんちくとかあと文脈的な物をたれてみようと思う。でも全部はやらない。疲れるしー。
●「あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう」「カルアミルク」岡村靖幸
原作の久保ミツロウ・監督の大根仁の二人が岡村靖幸のファンなので、思いっきり重要なシーンで使われている岡村ちゃん。とはいえ、彼がブレイクしまくっていたのは1990年位であり、この頃僕9歳。これくらいの年で岡村ちゃん聴いて夢中とか、めちゃめちゃマセガキじゃないかwwいや、僕もこの前のセルフカバーアルバム聴いてその物凄い格好良さにやられたけど、どっちかというと僕ら世代には川本真琴のプロデューサーとしての方が馴染みあったりするのかも。そこから知って聴くとかね。
●「SELF CONTROL」TM NETWORK
まさかTM NETWORKかとw幸世の「カラオケでGET WILD歌うくらいの軽いTMファン」っていうのはまさに自分もそんな感じな気がする。ていうかそれくらいしか歌えない気がする。まあこの局含めサビはだいたいわかるけど。ちょっと意外に見えるけど、「GET WILD」「BE TOGETHER」あたりをちょいと外してくるあたりが久保先生と大根監督の中二感が出ていると思う。
●「いかれたBaby」フィッシュマンズ
僕らの世代〜ちょい上くらいでサブカル的に耽溺してた人は多分殆どフィッシュマンズを通ってるんじゃないかな。僕は後追いだけど、その後の日本におけるファンクとかダブ・ゆるポップの祖先はかなりの部分ここに求められると思う。因みに今年デビュー20周年を記念して日比谷野外音楽堂で記念ライブを敢行。行ったけど、何とも言いがたいいいライブだった。ライブDVDになることが発表されているので、早く手に入れて繰り返し観たい。んで、その中でも特にダブ感の強いこの曲が使われている。因みにフィッシュマンズよりちょっと前に出てきてその後のポップスの流れに多大なる影響を与えたフリッパーズ・ギターはドラマにも映画にも登場してなかったりする。メガヒットというほどでは無いけどその後のミュージックシーンに多大なる影響を残してるという意味ではこの2組は90年代を代表するミュージシャンだと思うんだけどね。確かにちょっと明るすぎて違和感あるかなというところはあるけど。
●「Baby Cruising Love」Perfume
●「走れ!」ももいろクローバー
この二組を並べて語るのはいろいろな人に怒られそうだけど、どっちも好きなのであえて共通項を探りながら話をしてみたい。ていうかももクロ最近ホントきてるよね。
Perfumeとももクロの共通項としては、「自己紹介のキメのポーズ」「少人数でそれぞれのキャラがたってる」「曲の作り込み」あたりが挙げられるように思う。しかし何よりも、そこに漂うサブカル臭というか、王道をあえて外しながらコアな人気を確立したという所は大きく挙げられるんじゃ無いかと思っている。PerfumeのCDがオリコンチャートで1位になったときに言われたのは「テクノではYMO以来25年ぶり」だった。ももクロは言わずもがなというか、イロモノアイドル(とあえて言う)として、これまたコアな人気を確立している。最近テレビに出ることが増えたけど、そのキャラクターを遺憾なく発揮して健全な人たちをドン引きさせている。Perfumeが最初にテレビに出てた頃と割と似ているような。その上でPerfumeは中田ヤスタカ、ももいろクローバー(Z)はヒャダインこと前山田健一という稀代のトラックメイカーががっちり楽曲を固めている。楽曲の完成度は両方とも高いと思うし、それぞれのキャラクター性をさらに高めている。彼女たちは本当の意味で歌で勝負しているアイドルである。
●「LOVER SOUL」JUDY AND MARY
この曲はストーリーの中で一つのキーになっていて、JUDY AND MARYとその後のYUKIのソロワークについての立ち位置が、ヒロインのうち一人と幸世のすれ違いを象徴していたりする。なのでその辺の話を。
僕たちの世代ではジュディマリを知らないという人は殆どいないと思う。僕が知ったのはMステに出て「DAYDREAM」を歌ったときだった。その後の快進撃は言うまでもなく、1990年代後半という時代を代表するバンドの一つであったことは間違いない。
その一方で、2002年から始まったYUKIのソロワークは徐々に変化を経て、今やJUDY AND MARYの時とは完全に別の物となっている。アルバム「joy」で世界観の確立に成功し、その後も傑作「うれしくって抱き合うよ」等のコンセプチュアルでまとまった良質なアルバム作品を作っている。んで、実際この二者の間にはそれほどファン層の重なりがないように思われる。YUKIソロは普通に若いファンも多い(彼女がいつまでも若々しいと言うこともあると思うけど)。また、音楽性が全く別物であり、ソロワークはジュディマリほどシンプルで爽快な物ではない。だから「ジュディマリは通ってこなかったんだよね〜」「私YUKIのソロは知らないんだ」という会話になるわけ。というか同世代の友達でYUKIソロ聴いてる人あまりいないなあ。
因みにこの「LOVER SOUL」、個人的にはJUDY AND MARYの最高傑作だと僕は思っている。YUKIソロは長い夢が至高。
●「ばらばら」星野源
情景描写として物凄く最高なシーンで使われる。この曲は歌詞がすばらしい。というか、星野源のソロワークはアコースティックな手触りとぬくもり感にあふれたサウンドもさることながら、歌詞にあると思う。すごくしみる。曲調と合ってるというのもあるけど。最新アルバム「エピソード」初週の「くだらないの中に」とかもまたよい。あとは「ストーブ」って曲が葬式を歌った歌なんだけど、悲しすぎないながら何ともじんわり来る良曲。因みに星野源も今年31と幸世の同い年であり、立派なモテキ世代だったりする。この曲はあらゆる意味でナイスチョイス。
●「東京」くるり
くるりがこの曲でデビューしたのは 1998年。1980年生まれの幸世年代はこのときまさに18歳で、上京と言えばこの歌なんじゃないかな、と。となるとこの曲がこの映画で使われるのはある意味必然なのかもしれないね。
大学・社会人とずっとくるりがBGMだという人もそれなりにいるとは思うけど、このバンドも紆余曲折を経て今の姿になっている。しかしながら今でも最前線で張っている希有な存在でもある。個人的には「ワルツを踊れ」がすごく好きなんだけど、ああいう音楽的な挑戦を続けて、新しいメンバーを入れたりしているのが若さがあっていいよね。
●「今夜はブギー・パック」スチャダラパー featuring 小沢健二
この曲が発表されたのは中学生の時。まさにこの曲が音楽趣味・サブカル趣味の原点になっているという人も同世代にはずいぶんといるんじゃないかというくらい、サブカル文脈では歴史的な曲だと思う。小沢健二も突如活動を再開してライブしてみたり、HALCALIがカバーしたりで最近またリバイバルになっている曲。いずれにせよこれからも歌われ続ける曲になるんじゃないかと思う。
今年ワーハピで初めて生で聴いたけど、一緒に行った3つくらい上の人が感極まっていた。やっぱりこの世代には結構特別な曲だよなあ。因みに、この曲が使われている映像はすごい。必見。
それ以外にも「一生一緒にいてくれや〜」こと「Lifetime Respect」とか(これネタで入れたとしか思えないけどw)いろいろな曲が使われている映画版モテキ。ここまで音楽を前面に出しながら自分は音楽やらないっていう物語も珍しいけど、その分いろいろな曲が場面を彩るいい作品になっていると思うので、是非観て欲しいな、と思う。
11月 14 2011
みんな最初はるり子だったでしょ〜映画「モテキ」感想
映画「モテキ」が興行収入20億円だそうだ。
正直驚いた。漫画もドラマもそれなりにヒットしたけど、あくまでも限定した層の中での話でしかなく、ここまでの広がりになるとは全く思えなかったから。なってくれれば面白いなと思ってはいたけど。
まず最初に全体的な感想から言うと、エンターテイメントとしては最高に面白い映画だった。音楽をふんだんに盛り込んで、ミュージカルみたいに仕立てつつ、テンポ良く笑いと涙をふんだんに織り交ぜながら進行していった、あっという間の2時間だった。
と前置きした上で、うーんって考え込んでしまったシーンについてちょいと言及しておきたいなと。
ドラマの「モテキ」は4人の女の子と着いたり離れたりを繰り返しながらストーリーが進行していくわけだけど、映画版は時間の制約もあるのだろうけど、割とラスボスである長澤まさみのみゆきちゃんに一点集中してしまっている。まあそれはしょうがないことだと思うけど、宣伝広告とはちょっと違うよなと。特に真木よう子ファンは結構肩すかしくうんじゃないの?まあ一人一人は大根仁監督のこだわりにより物凄く魅力的に描かれているのでその点では見所がたっぷりあると思うけどさ。
その一方で、映画版での幸世はドラマよりクソ野郎になっている。人間的に好きになれない感じがより増してるというか。まあそれはそれで演出上の狙いなんだろうけど、人間性を疑いたくなるレベルだよね。
そんな中すごく引っかかったシーン。麻生久美子のるり子が幸世に「無理」って言われて泣きつくシーン。「神聖かまってちゃんとか勉強するから〜重いとか言わないで〜」っていうシーン。だから重いんだよって思いながらも、それを幸世が思いっ切りはねのけたシーンが、この映画的には裏のコアな部分なんじゃないかなと思うわけ。
この「モテキ」という映画は、前にも書いたけど音楽を主軸として進む、世にも珍しいリスナーが主人公の物語。それゆえ出演者の音楽に対するスタンスとか音楽をどう感じてどう行動するかなんかも表現手段として使われているいるわけだけど、監督の大根仁と原作の久保ミツロウの趣味で、あえて大ヒット曲は外されているわけ。マス・メインストリームじゃなくてサブカル。ジュディマリじゃなくてYUKIソロ。AKBじゃなくてももクロ。
でもさあ、最初からサブカルどっぷりな人なんている訳なくて、どっかで何かに出会って、そこからはまっていくわけでしょ。んでもって最初のきっかけは好きな人が聴いてるとかだったりするとかあるじゃない。そしていろいろ調べたり文脈理解して広げてったりするわけでしょ。共演とか仲良しとかオススメとかそこから広げてどっぷりはまって世界を広げていくんでしょ。るり子は昔の幸世であり、大根仁であり、久保ミツロウなんじゃないのかな。どこまで狙ってやったんだろう。確信犯的にやったとしたら、相当な自傷行為だよね。
でもそれをはねのけてあれでるり子は退場決定したのに結構がっかりした。物語としてはそれでアリなのかもしれないけど、あまり救われてないよなー。入門させなよ、というのが率直な気持ちであったり。サブカルこじらせすぎて選民思想持っちゃう痛い人でしかないよなあ、というのが鼻についたのでありました。そこにある物が全てじゃないはずなんだけどな。どの曲でも同じ反応するロキノンファンみたいなもんか…曲と反応がマッチしたらいいけど、みたいな。いやなんか合ってるような違うような…まあいいや。
でもまあ面白かったよな。色んな所に色んな小ネタがあったし。もう一度見たいな。
By たにみやん • Movie, Music •